抄録
認知症者では食事の摂取が困難になる症例が存在する.食事の摂取が困難になると低栄養や脱水を招き,さらなる認知機能の低下や免疫力の低下など様々な問題を引き起こす.本研究では,認知症者に対し嚥下機能に即し,かつ健常者が喫食するものに近い見た目の食品を提供することで摂食量がどのように変化するか検討した.病前好みであったケーキを1 名の重度認知症を有する嚥下障害者に提供した.するとミキサー食に比べ大幅に摂取量が増加した(ミキサー食平均摂取量:4.10%,ケーキ平均摂取量:93.20%).ケーキは嗜好性が強いが栄養補給という目的には不向きである.そこで食形態を変更することの効果を確認するため,さらに9 名の重度認知症を有する嚥下障害者にケーキあるいは見た目が常食と変わらない嚥下回復支援食を提供した.その結果,9 名の内6 名には大幅な摂取量の増加が認められた(ミキサー食平均摂取量:1.06%,ケーキ平均摂取量:57.56%,嚥下練習食平均摂取量:98.00%).重度認知症者であっても常食に近い見た目の食品であると摂食量が増加する可能性が示された.