抄録
歩行中の足尖の引きずりを減少させることを目的として,即時的聴覚的フィードバックを実施し,その効果について検討した.対象は多発性脳梗塞により右片麻痺,運動失調,注意障害を呈した70歳代男性である.ベースライン期は,足尖を引きずらないように口頭指導と歩行中に文字教示を行った.そして,練習後にリハビリ室1周中の引きずり回数をフィードバックした.ベースライン期の引きずり回数は,増加傾向にあった.介入では,文字教示を取りやめチェックカウンターのクリック音を用いて足尖の引きずりを即時的にフィードバックした.引きずり回数は , 介入1日目から著減した.5日目以降,3日連続で引きずり回数は0回となり,介入は終了した.この期間中,身体機能に大きな改善はなく,今回の介入は片麻痺患者の足尖の引きずりを減少させるうえで有効に機能したものと考えられた.