今回,牽引による段階的難易度設定を用いた起居・移乗動作練習を新たに考案し,その効果について検証した.症例は79歳女性,意識障害と軽度左片麻痺,重度右片麻痺を呈していた.介入前,側臥位〜on elbow~on handに至る過程で起き上がりに介助を要した.介入では,オーバーヘッドフレームに設置した滑車とロープ,重錘を用いて側臥位にある対象者の上半身を起き上がり方向に牽引し,段階的に重錘の重さを軽くしていった.その結果,介入26日目に重錘無しで起き上がりが可能となった.ベッド-車椅子間の移乗動作は,立ち上がり〜方向転換に介助を要していた.介入では,端座位にある対象者の上半身を立ち上がり方向に牽引し,段階的に重錘の重さを軽くしていった.その結果,介入から14日目には重錘無しで移乗が可能となった.本介入は,起き上がりや移乗動作練習を早期から成功させるうえで有益な方法と考えられた.