本研究では,重症片麻痺患者に対して麻痺側座面へのクッションの挿入を試み,その効果についてシングルケースデザインを用いて検討した.症例は,左被殻出血により右片麻痺を呈した68歳男性である.ベースライン期では,支持基底面の拡大によって難易度を低減させ,徐々に支持基底面を減少させる練習方法を取り入れたが,座位保持能力は向上しなかった.介入期では麻痺側座面下へのクッションの挿入を行って座位保持練習を実施した.その結果,3日間連続で最終練習段階に成功し,大腿上手支持による座位保持が可能となった.クッションを挿入した初日から座位保持能力が向上したこと,運動麻痺などの機能障害に変化を認めなかったことから,今回の介入は重症片麻痺者の座位保持能力を向上させるうえで極めて有効に機能したものと考えられた.