こころの健康
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兵庫県南部地震における被災後のストレスについての一考察
竹島 早苗松原 六郎佐々木 雅代
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1996 年 11 巻 1 号 p. 72-79

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抄録

自然災害時の多くの人々の心理的状況を把握し, 精神衛生に役立てるためには, 精神疾患という単位ではなく, より一般的な心理的ストレス反応について知ることが重要と思われるが, 実際の災害においてそのような実証的研究を行った報告は少ない。そこで我々は, 兵庫県南部地震における被災者の精神的健康度を, GHQ28項目版を用いて検討した。その結果, 対象者の81.8%がGHQ得点のスクリーニングのカットオフポイントである7点以上であり, 精神的不健康の状態にあることが示された。女性のGHQ得点は, 男性よりも有意に高かった。避難所で世話係をしている学校教師のGHQ得点は, 被災住民よりも有意に高かった。被災者の支援ネットワークの数を検討したところ, 独居の被災者の方が家族のある被災者よりも有意に少なかった。支援ネットワークがストレスに及ぼす影響を検討するため, GHQ得点の高低で対象者を2群に分け, それぞれの群の支援ネットワークの数を比較したところ, 低ストレス群の方が高ストレス群よりも有意に多くの支援ネットワークをもっていた。支援ネットワークの質について検討したところ, 低ストレス群の方が高ストレス群よりも, 公的な援助を支援ネットワークとして認知していることが示された。
以上より, 地震災害が多くの被災者の精神的健康に多大な影響を及ぼすこと, 加えて, 避難所で世話係を務める人々に, より心身の負担がかかりやすいことが明らかになった。また, 心理的ストレスの軽減には, より多くの支援ネットワークを持つことが有効であり, 質的には個人的な援助だけでなく公的援助などの支援ネットワークが有効であることが示された。

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© 日本精神衛生学会
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