こころの健康
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三世代同居と母子の心理的ストレスの関連についての基礎的調査
赤平 理紗大嶋 巌
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2002 年 17 巻 1 号 p. 57-65

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抄録

本研究では部分同居と完全同居を合わせた三世代同居と母子の心理的ストレスの関連を検討した。居住形態が母親に慢性的な “ストレス要因” をもたらし, 緩和資源としての “サポート要因”, 意味付けに関わる母親の “認知要因” を介して, 母親と子供の “心理的ストレス反応” を生成するというモデルを活用して各要因の関連性を明らかにすることを目的にした。都内の私立男子中学校の3年生と私立共学商業高等学校の1年生から3年生の生徒とその母親を対象に, 自記式調査票を用いて調査を実施した。居住形態別に比較すると, 母親と子供の “心理的ストレス反応” には直接的な差は認められなかった。しかし, 同居・準同居群の母親の家族内での[役割ストレッサー]が有意に高く核家族群との間で差が認められた。また階層的重回帰分析より, 同居・準同居群において母親の[精神健康度]には[役割ストレッサー]のほかに[親類・家族支援]や, 役割葛藤に対する感受性の強さ, すなわち[私的自己意識]が関連している点が核家族群と異なった。また, 子供の “学校生活ストレス反応” も, 同居・準同居群では, 核家族群より家族条件全体と強い関連があり, 中でも母親の[精神健康度]と関係があることが示唆され, 母親の[精神健康度]の緩和因子となった[母方祖母]の存在が逆にストレッサーとなっていた。三世代同居または準同居という複雑な家族システムの中で, 役割葛藤による母親の心理状態が[親類・家族支援]や[私的自己意識]を通して緩和または刺激され, さらに家族条件全体と関連して子供の心理状態が生み出されるという機構があると考えられた。

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© 日本精神衛生学会
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