国語科教育
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Ⅱ 研究論文
小学校入門期における子どもの書字実態に関する考察――観察法(エスノグラフィ)によるエピソードデータの分析を通して――
森 美智代
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2021 年 90 巻 p. 35-43

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抄録

本稿では、(a)小学校入門期における子どものかな文字の書字と指導の実態、(b)指導上の問題をフィールド調査によって明らかにした。対象は、一般的な公立小学校1年生で、4月から12月にわたりほぼ毎日、観察法(エスノグラフィ)によるエピソードデータの収集を行った。エピソードは、フィールドノートの記述を「事実」と「コメント」に分けてExcelファイルに蓄積した。エピソードデータをもとに、子どもたちがそれぞれの方法でかな文字を習得していく過程を描き出した。なかでも子どもたちは、音韻分析力の習得と表記法の理解に苦戦していた。また、指導上の問題点として、教師が、子どもの文字の習得を単に「書かれたもの」のみで評価してしまうと、個々の子どもの成長を正しく看取できないことを指摘した。小学校入門期においては、子どもたちのペースを重視し、理解と成長を見守る指導が必要である。

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© 2021 全国大学国語教育学会
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