本稿は、大正末期から昭和初期にかけて北海道で刊行された『国語と人生』を分析して、当代・当地における国語教育の実態を解明することを目的としている。併せて、従来の国語教育に関する歴史的研究で扱われてこなかった地域で編纂された国語教育雑誌の資料的価値を明らかにすることを副次的なねらいとしている。本稿をとおして、『国語と人生』が画一的な教育を批判し、生活と乖離した教育の克服を目指しており、そのために、中央の先進的な教育思潮や国語教育に関する教育情報を掲載したことが明らかになった。雑誌の内容は、国語・国語教育に関する理論的な内容から、読者の要望に応えて実践的な内容にまで射程を広げていった。雑誌創刊当初から目指された郷土に根差した国語教育に関しては十分提言できなかったものの、同誌は地域の一般的な教員層を読者として取り込み、大正新教育の思想圏において彼らを成長させ、教育研究の担い手・教育情報の発信者に成長させる一助を担った。