抄録
臓器提供者(ドナー)と臓器移植を受ける者(レシピエント)の相性をみる検査を組織適合性検査と呼ぶ。臓器移植では,ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)の検査が重要となり,HLAタイピング(HLA抗原検査),抗HLA抗体(ドナー特異的抗体),クロスマッチ(HLA抗原抗体反応)と3つの組織適合性検査が行われている。検査技術の発展により,HLAタイピングではより広範囲な遺伝子座(ローカス)に対して正確でかつ高解像度となり,ドナー特異的抗体では高感度で検出できる装置の普及が進んでいる。そのため,海外では,クロスマッチではドナーHLAタイピングとレシピエント抗HLA抗体からドナーリンパ球(抗原)とレシピエント血清(抗体)を直接反応させることなく拒絶反応のリスクを推測するバーチャルクロスマッチが進みつつある。以前から行われてきたHLA検査に加え,最新の解析が加わることでより専門性が高くなっている分野である。本連載では,肺移植におけるHLAタイピング,抗HLA抗体,クロスマッチについて解説する。