蚕糸・昆虫バイオテック
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テクニカルレポート
アルミニウムクライオプレートを用いた熱帯・亜熱帯原産クワ培養茎頂の超低温保存法の開発
山本 伸一Rafique Tariq福井 邦明関沢 健太郎小山 朗夫市橋 隆壽新野 孝男
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2012 年 81 巻 1 号 p. 1_57-1_62

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抄録

 熱帯・亜熱帯原産のクワについて,アルミニウムクライオプレートを用いたガラス化法が適用できるかを検討した。培養シュートから切り出した茎頂(1-1.5×1.0mm)を,0.3Mショ糖および0.2mg/l BAを添加したMS培地上で25°C,1日前培養した後,直径1.5mmの凹みを10穴用意したアルミニウムプレートにアルギン酸ゲルを用いて固着させた。脱水耐性付与処理は茎頂を固着したプレートごと0.6-1.2Mショ糖を含むローディング(LS)液に25°Cで30分間浸漬して行い,PVS2液で25°C・40-60分間,浸透脱水した後,液体窒素(LN)中で保存した。LN保存後の培養により90-100%と非常に高い生存率が観察された。最適条件である前培養1晩,0.6Mショ糖添加LS液による脱水耐性付与30分間,およびPVS2液50分間の浸透脱水の後,LN中に浸漬したところ,他の系統においても73-97%と高い生存率で再生育した。アルミニウムプレートを用いることにより,LS液およびPVS2液処理における操作が容易になり,操作中に茎頂が受ける損傷が軽減され高い再生率が得られたと考えられた。さらにアルミニウムプレートにより習熟度の低い技術者によっても容易にガラス化処理が可能となることが確かめられた。以上のように,アルミニウムクライオプレート法は,ジーンバンク等におけるクワ遺伝資源の標準的な超低温保存技術として利用可能であると考えられた。

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© 2012 社団法人 日本蚕糸学会
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