蚕糸・昆虫バイオテック
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81 巻, 1 号
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特集:「昆虫の水バランスをつかさどるしくみ」
総説
報文
  • 藤森 遼, 村上 聡, 岩松 琢磨, 横山 岳, 蜷木 理
    2012 年 81 巻 1 号 p. 1_51-1_55
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル フリー
     カイコの成虫生存期間は通常4~8日であるが,本研究室が保存する系統の中に,成虫生存期間が2~3日と短い成虫短命系統が存在する。これまでの研究からその要因のひとつとして水分が関与することが示唆されている。そこで成虫を保護する湿度が成虫生存期間に及ぼす影響について調査した。その結果,対照系統として用いたN17(大造由来)において,湿度76%の中間区1で平均成虫生存期間は12.95日で最も長かったのに対し,湿度21%の低湿区では平均成虫生存期間が8.84日,湿度96%の高湿区では平均成虫生存期間が7.50日と短かくなっていた。このことから,正常系統では湿度75~80%が最適な湿度条件であることが示唆された。一方,成虫短命系統のN25では,湿度74%の対照区では平均成虫生存期間が3.42日であったのに対し,湿度96%の高湿区では平均成虫生存期間が5.22日で最も大幅な延長がみられた。湿度21%の低湿度区では平均成虫生存期間が2.71となり最も短縮された。このことから,成虫短命形質では,成虫を保護する湿度が高くなるにつれて成虫生存期間が延長するという特徴がみられることがわかった。
テクニカルレポート
  • 山本 伸一, Rafique Tariq, 福井 邦明, 関沢 健太郎, 小山 朗夫, 市橋 隆壽, 新野 孝男
    2012 年 81 巻 1 号 p. 1_57-1_62
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/21
    ジャーナル フリー
     熱帯・亜熱帯原産のクワについて,アルミニウムクライオプレートを用いたガラス化法が適用できるかを検討した。培養シュートから切り出した茎頂(1-1.5×1.0mm)を,0.3Mショ糖および0.2mg/l BAを添加したMS培地上で25°C,1日前培養した後,直径1.5mmの凹みを10穴用意したアルミニウムプレートにアルギン酸ゲルを用いて固着させた。脱水耐性付与処理は茎頂を固着したプレートごと0.6-1.2Mショ糖を含むローディング(LS)液に25°Cで30分間浸漬して行い,PVS2液で25°C・40-60分間,浸透脱水した後,液体窒素(LN)中で保存した。LN保存後の培養により90-100%と非常に高い生存率が観察された。最適条件である前培養1晩,0.6Mショ糖添加LS液による脱水耐性付与30分間,およびPVS2液50分間の浸透脱水の後,LN中に浸漬したところ,他の系統においても73-97%と高い生存率で再生育した。アルミニウムプレートを用いることにより,LS液およびPVS2液処理における操作が容易になり,操作中に茎頂が受ける損傷が軽減され高い再生率が得られたと考えられた。さらにアルミニウムプレートにより習熟度の低い技術者によっても容易にガラス化処理が可能となることが確かめられた。以上のように,アルミニウムクライオプレート法は,ジーンバンク等におけるクワ遺伝資源の標準的な超低温保存技術として利用可能であると考えられた。
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