抄録
教育分野におけるITの活用が声高に叫ばれる今日、インターネットを活用した学習コミュニティの形成や、e-Learningの効用など、IT教育の華やかな成果ばかりが注目され、もてはやされる傾向がある。その一方では大量の「教育難民」が生み出され続けているのだが、この問題の本質が真剣に議論されることはほとんどなく、手付かずのまま放置されているのが現状であろう。彼ら「難民」の救済のためには、(1)講義に関連した時空間を「学びの社会空間」として捉えなおすこと、そして、それを(2)従来の「縦割り型のIT座学」を超えた発想で再構築していくことが必要である。本稿ではまず、現在の日本の大多数の学生たちが置かれているであろう「状況」について考察し、現在の大学教育の問題点を整理したうえで、江戸川大学の「社会調査演習実習(天野担当)」における、過去十年に及ぶ経験について検討することを通して、IT時代の講義を有意義なものとするうえで重要となるポイントについて論じることにしたい。