コンピュータ&エデュケーション
Online ISSN : 2188-6962
Print ISSN : 2186-2168
ISSN-L : 2186-2168
最新号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
特集「生成AI を活用した新しい教育への展望」
  • 大倉 孝昭
    2023 年 55 巻 p. 12-18
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     2021年に数理・DS・AI教育プログラムをeラーニングで開始した。2022年度から反転授業を導入し,2023年は授業時間外学修における個別支援を目指して,オンライン評定システムを開発・運用した。その結果,図に変換されたグラフの提出やグラフ種類誤りなどの基本的な誤りは低減された。一方,レポートを正解との文書間類似度で評定する方法では,改善点が具体的でないため,学生が改善すべき箇所が分かり難く,安易な修正を繰り返す行動を招いた。その問題解決のためには,生成AIによる改善点の個別フィードバックが必要と考え,実験を行った。その結果とオンライン評定システムに生成AIを導入する方法を提案する。

  • -テクノロジーは学習をどのように支援するのか-
    髙橋 麻衣子
    2023 年 55 巻 p. 19-24
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     GIGAスクール構想,Covid-19の流行によって教育現場が大きく変革していく中,生成AIの登場によって教育の在り方を再考する必要に迫られている。本稿では,これまでに議論されてきた生成AIの教育利用の可能性や注意点に触れながら,生成AIを活用した教育を考える。特に,読み書き等の認知機能を代替するようなICT活用による学習支援の文脈に生成AIの活用はどのように組み込まれうるのかに着目し,ICTを用いた読書感想文作成支援プログラムにおいて,ChatGPTを紹介し活用方法を議論した際の児童・生徒の反応を紹介する。これらを通して,生成AIとともに生きるこれからの時代の教育の在り方を考察する。

  • 矢野 浩二朗
    2023 年 55 巻 p. 25-31
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究では,授業中に短文回答型形式の理解度確認問題を出題し,得られた回答の採点を迅速に行う手段として,OpenAIのChat APIを活用した自動採点システムを開発し,大学のプログラミング授業に導入した。その結果,模範解答との類似性に基づいて答案をAIに評価させたところ,一定の精度を持って採点が可能であることが示された。しかし,一部で誤判定が見られることも明らかになった。今後は,プロンプトの改善やAI以外の答案分析手段(キーワードマッチングなど)との組み合わせにより,システムの効率化と精度向上を目指す。

研究論文
  • 遠藤 直弥, 室伏 春樹
    2023 年 55 巻 p. 32-37
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究では,中学校技術・家庭の「D 情報の技術」における問題解決学習で利用できるスマートハウス教材を開発した。開発したスマートハウス教材では,Webに提供する仮想の家電製品や住宅設備に対して,Bluetooth Low Energy規格でPCと接続したmicro:bitで制御するプログラムを作成する。プログラムの作成はブロック型プログラミング環境のMakeCodeを利用する。初学者でもプログラムの作成が容易になるようスマートハウス用の独自ブロックを開発した。PCとmicro:bitの接続は,Web Bluetooth APIを利用し,Webブラウザ上で実行できるようにした。このような環境構築により,計測・制御と双方向性のあるコンテンツのプログラミングを複合した学習カリキュラムが実現できる。

  • -コスト感・方略有効性・メタ認知方略に焦点をあてて-
    鈴木 明夫, 粟津 俊二
    2023 年 55 巻 p. 38-44
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     2020年5月18~22日(調査1),2020年8月12~16日(調査2),2021年5月11~15日(調査3)の3度に分けて,大学1~4年生を対象に遠隔授業の学習環境をどのように認知しているか,コスト感,有効性の認知,メタ認知方略との関係を中心に調査した。学習方略の調査手法を用いて調査した結果,コスト感,遠隔授業の有効性,遠隔授業に適したメタ認知のいずれもが,遠隔授業への肯定感に関係していることが判明した。コロナ禍の遠隔授業は経験を重ねるほど,コスト感は高く認知され,有効性の認知も低下し,遠隔授業に適したメタ認知は有効に機能していないことが考えられる。遠隔授業への肯定感はこれらの影響も受けるため,コロナ禍の遠隔授業を経験したことで,遠隔授業への肯定感はやや低下した。

  • 下﨑 高, 谷塚 光典, 森下 孟
    2023 年 55 巻 p. 45-49
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究では学習者の興味・関心を引き出すと仮定した働きかけを動画教材に施したうえで,それらの働きかけが学習者の興味・関心にどのような影響を与えるのかを分析した。その結果,学習者の興味・関心を引き出すためにキーワードを列挙した板書の作成や,授業者が顔出しで説明をしつつ問いかけを行うことが有効であることが示唆された。動画教材において情報が一目で整理でき,それらをきっかけに授業者が発問を行うことが学習者の興味・関心を引き出すために重要である可能性が高いといえる。また,動画教材が単なる教材としての役割だけでなく,対面授業における教師の役割も同時に果たせるように働きかけを施すことが重要であることがわかった。一方で,比喩表現や身振り手振りなど学習者の興味・関心に負の影響を与えていた働きかけも見られた。したがって,学習者の興味・関心を引き出すために,動画教材の作成時に教材・教師として両面の役割を意図的に施すことが重要である。

実践論文
  • -ロイロノート・Google Workspace for Education を用いた実践の一考察-
    平山 靖
    2023 年 55 巻 p. 50-55
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,道徳科の授業においてICTを活用して個人の意見を共有する授業実践を通し,その効果を明らかにすることである。小学校4年生3クラスに対して道徳科の授業を行った。経験の共有場面において,ロイロノート・スクールを用いて記入した個人がわかる形でノート画像を共有したクラス,Google formを用いて記入者が匿名となる形で文字データを共有したクラス,ICTによるサポートを用いなかったクラスの3種の方法をとった。いずれのクラスでも十分に意見の共有及び共有の時間をとることができた。ICTを活用することの効果として,発言に意欲的ではない児童の意見についても収集,共有できることや,匿名による経験の投稿の方が,ノート画像での共有より多くの意見が集まる可能性が示唆された。また,授業後のアンケート結果の分析を行ったところ,いずれのクラスでも道徳的価値に関する自身の経験の想起は道徳的価値理解に対して影響があることが確かめられた。

  • -教育目標分類学を援用した学習活動の目標の明確化を通して-
    福井 隆介, 安永 太地, 塩田 真吾
    2023 年 55 巻 p. 56-61
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     GIGAスクール構想によって1人1台端末の整備および高速大容量の通信ネットワークの整備が急速に進展し,ICTを活用した授業の推進が求められている。ICTを効果的に活用した授業を促進するため,本研究では学習活動に着目した授業デザイン支援ツールを開発し,現職教員を対象とした研修を実践するとともにその成果を検証することを目的とした。事後アンケートの結果から支援ツールの有効性が示唆された。また,ICT活用段階の異なる学校の実践を通して,ICT活用の初期校ではICT活用を前提とした学習活動や支援ツールの共有に課題があることが明らかとなった。

  • 小牧 瞳, 明石 萌子, 郡司 日奈乃, 木口 恵理子, 竹内 正樹, 阿部 学, 丸野 遥香
    2023 年 55 巻 p. 62-67
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究では子どもにDXの概念を用いた問題解決方法を学ばせる授業に関する研究が少ないという問題に対し,高等学校「総合的な探究の時間」でDXの概念を用いた問題解決を行う授業プログラムの開発を試みた。公立高等学校1年生を対象に授業を実施した結果,授業内容の理解を問う事後アンケートの項目で主観的な評価については概ね肯定的な評価が得られた。他方,選択式テストにおいてDXの事例の理解を問う項目では正答を答えた生徒が少なく,思考プロセスや概念の伝達方法等に検討の余地があることが分かった。

  • 井熊 英治, 中村 康則
    2023 年 55 巻 p. 68-73
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究は,出前授業として実施したキャリア教育「南極クラス」において,対面授業とZoomを用いた教師支援型遠隔授業(以下,遠隔授業)の実践を通じ,それらの違いを明らかにすることを目的とした。授業後に収集した児童の感想文をもとに,計量テキスト分析(テキストマイニング)を用いて双方を比較したところ,対面授業は遠隔授業にくらべキャリア教育の効果が高いことが示された。その一方で,南極の映像の伝わり方においては,遠隔授業が対面授業にくらべ優れる可能性が示唆された。また,遠隔授業では,気に入った南極の画像をキャプチャーして楽しむなど,新しい学びの可能性も示された。

  • 𠮷田 拓也, 山本 周
    2023 年 55 巻 p. 74-79
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究では,中学校「技術」において中高連携を意識して,情報セキュリティに関する新たな教材および実習を取り入れた授業を提案した。中学1年生204名を対象に試行授業を行い,授業実施前後に質問紙調査を実施し,その有用性を検証した。試行授業では,対象生徒にとって身近で関心が持てるような題材を選択したり,視覚的な体験ツールを用いて実習活動を行った。その結果,授業実施後に「知識・技能」,「思考・判断・表現」および「主体的に学習に取り組む態度」の要素平均得点が有意に増加した。

  • -研究機関と中学校の教室をつないだ遠隔授業に基づいた検討-
    飯田 和也
    2023 年 55 巻 p. 80-85
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,研究機関と中学校をつないだ遠隔授業において,チャットを用いた質問が生徒の質問行動に与える影響を明らかにすることである。Zoomを用いた授業実践から,チャットを利用した質問に関して,以下の点を明らかにした。1点目は,質問が参加者全員に明示される通常のチャットよりも,質問が質問した生徒本人と講演者のみにしか表示されない匿名性の高いチャットの方が,質問者数は有意に増加する点である。2点目は,生徒は対面授業における挙手による質問よりもチャットを用いた質問の方が質問しやすいと感じている点である。3点目は,中学生において,周囲に生徒がいる遠隔授業におけるチャットに対して,匿名性や質問のタイミングの自由度に関して有用であると評価している点である。

  • 岡崎 渉, 鳴海 智之, 秋光 恵子
    2023 年 55 巻 p. 86-91
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     外国人児童生徒等に対する日本語学習用の教材について,先行研究では,動画教材も子どもの日本語学習に有効な教材となり得ることが示されている。だがその有効性は,動画教材に関するどのような要素に基づいているのかはっきりしない。そこで本研究では,筆者らが開発した動画教材を使用した小・中学校の日本語指導担当者に対し,動画教材に関するさまざまな要素への評価をアンケート調査により探った。その結果,動画教材への評価は,指導上の使いやすさ,子ども一人での活用,学習内容のわかりやすさ,学習項目の適切さに関する各項目でおおむね高く,動画教材による学習の有効性を支える要素となっていることが示唆された。反面,子どもの自発的な学習の促進などの点では十分でないこともわかった。

  • 髙瀬 和也, 齋藤 唯, 可知 穂高, 塩田 真吾
    2023 年 55 巻 p. 92-97
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究は,自画撮りトラブルをテーマとした中学生向けの教材を開発し,その効果を明らかにすることを目的とした。教材は,安全人間工学におけるサボタージュ分析の手法に基づき,学習者が「写真を送ってしまう状況」を考え,自画撮りトラブルを自分事としてとらえさせることに着目して設計した。同教材を用いた実践は中学生165名を対象とし,評価は学習者を対象としたアンケート調査を実践の前後に行った。結果,被害に遭う可能性の認識やトラブル遭遇場面の想像についての得点を向上させる効果が認められた。また,被害可能性の認識や写真を送信する状況の想像については,SNS上での知らない人とのやりとりの有無と,授業実践の前後との2要因間に交互作用が確認された。学習者は授業を通して,被害に直面する状況を想像しやすくなり,自画撮りトラブルを自分事としてとらえられるようになったことに加え,その度合いはSNSを普段活用していない学習者の方が大きかったと考えられる。

研究ノート
実践報告
  • 村上 剛志, 齊藤 勝
    2023 年 55 巻 p. 106-109
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     本研究は,学習障害のある児童へのICTを用いた代替アプローチの指導や支援の在り方を検討したものである。書字困難を抱える児童の学習手段の代替としてICT機器を導入し,当該児童がその教具を使用することによって,課題作成時の書字数(以下,入力文字数)の増加が図られ,課題の未提出が改善され,さらには学習意欲の向上が図られたという成果を確認することができた。本研究の結果は,今後の学校教育において学習障害を持つ児童に対するICTの活用が有効であることを示し,昨今の教育潮流でもある,「個別最適な学び」という学校や教師の合理的配慮を実現する上で極めて有効的であると考える。

  • 栗栖 幸久, 光永 文彦
    2023 年 55 巻 p. 110-113
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/11
    ジャーナル フリー

     2020年の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,教育機関は急激にデジタル化を進めた。このデジタル化の動きは授業だけではなく,部活動や各種行事へも影響を及ぼし,多くの革新をもたらした。西大和学園では,生徒を中心とする技術統括局を設立し,対面形式での文化祭開催が難しくなったことを背景にクラウドを活用したオンラインでの実施に転換した。このプロジェクトの過程で技術統括局は6つのソリューションを開発し,その結果,クラウドベースの高性能なシステムの構築が可能となった。また,コロナが収束し対面形式が可能となった現在でも,生徒たちは課外活動の選択肢としてクラウドを考慮するようになり,クラウドソリューションの課外活動への導入の効果が確認された。

編集後記
feedback
Top