コンピュータ&エデュケーション
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INTERVIEW 「新会長に聞く」
特集「VR・メタバースが創出する新たな教育空間」
  • ― NTTコノキュー DOORを活用した中学校社会科での学習 ―
    神谷 耕一
    2024 年 57 巻 p. 12-15
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     中学校社会科の地理分野では,自然環境と人間の生活との関係を理解することが求められている。しかし,現状では生徒たちが地形の学習について関心をもてていないという課題があった。そこで本実践では,メタバースを活用して生徒たちが日本の地形を体感しながら学ぶという手立てを導入した。まず,メタバースの3D地形上を一緒に歩いて関心を高めた上で,自然環境と人々の生活の関連性について調べ学習を行い,調べた内容をメタバースの地形上にアウトプットをした。アンケート結果からは,本実践により,地理の学習への関心が高まり,地形と人々の生活との関係を考えることに示唆された。

  • ―日本語クラスにおける単元目標を発揮する場としてのメタバース利用―
    阿部 公彦
    2024 年 57 巻 p. 16-21
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     高等教育,中等教育を問わず学校で行われる外国語の授業においては,そのほとんどが教室の中だけで学習,練習,活動を行う。しかしながら,学ぶことに現実感を持ち,より明確な目標を持って学んでもらおうとするのならば,学習者が学んだことを発揮することができる可能な限り現実に近い環境も提供することが必要であると考える。筆者は台湾の高校で第二外国語としての日本語の授業を担当し,日本語による総合的なコミュニケーションスキルを得ることなどを目的とした授業を行なっている。今回はその授業内で,知人を観光地に案内し観光地について簡単に紹介することができることを目標とする単元を行い,単元終了時に外部からゲストを招きメタバース内で生徒が観光地を紹介するというイベントを行った。本稿ではその単元とメタバースイベントについての実践を報告,またイベント後に回収したアンケート結果をもとに評価できる点や改善点を紹介したい。

  • ―授業の視覚化,学習モチベーションの向上を目指して―
    伊藤 理絵, 一宮 誠
    2024 年 57 巻 p. 22-28
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     本論文では,聴覚障がい教育における先進的なデジタル技術,特にVRやメタバースの活用方法について検討する。まず,プロジェクトの概略を紹介し,聴覚支援学校特有の配慮や留意点を説明した上で,各技術の具体的な活用方法を実践事例ごとに整理し,教育現場での有効性を検証する。これらの取り組みを通じて,現代のデジタル環境において聴覚障がい生徒が取り残されることなく,すべての生徒が平等に学べる「インクルーシブルなデジタル環境」を実現するための具体的な提言を示す。

  • ―新たな居場所創出と社会参加への架け橋―
    水瀬 ゆず, 冨岡 奈津代, 上川 多恵子, サトウ タツヤ
    2024 年 57 巻 p. 29-34
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     本稿では,VRゴーグルを用いた不登校生徒支援プログラム「ぶいきゃん」の実践について報告する。2023年度に京都版と全国版で実施されたプログラムでは,計21名の不登校中高生が参加し,1ヶ月間にわたるVR空間での体験型学習と交流活動を行った。アンケート調査の結果,参加者の満足度は非常に高く,他の不登校生徒への推奨意向も強かった。メタバース空間の匿名性と没入感,およびサポーター制度などが参加者の心理的安全性を高め,社会的な交流を可能にしたと考えられる。本実践は,メタバースが不登校生徒支援に新たな可能性をもたらすことを示すとともに,効果検証や持続可能性の確保など今後の課題も明らかにした。

研究論文
  • 石切山 大, 大多和 秀樹, 蒔田 悠, 酒井 郷平
    2024 年 57 巻 p. 35-40
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     GIGAスクール構想の導入に伴い,各自治体では独自にGIGA端末に関するルールを設定している。そのルールの内容や傾向を把握することにより,今後のGIGA端末に関するルールづくりに関わる傾向や課題を明らかにすることが出来ると考えられる。そこで,本研究では,各都道府県が発行するGIGA端末に関するルールが示された資料を対象に,インターネット検索を用いた調査と分析を行った。

     その結果,①各都道府県における67自治体のうち,約半数の教育委員会がルールを提示していないこと,②ルールを提示している自治体のルールには「利用目的」,「利用制限・禁止」,「健康」,「端末管理」,「データの運用」,「モラル」,「トラブル対応」,「その他」に関するルールがあり,ルールの構成要素としては「健康」に関するルールが最も多く,次いで「利用制限・禁止」に関するルールが多いこと,③子どもたちのネットトラブル経験率が高い自治体と低い自治体では,ルールの設定状況には大きな差がないことが明らかとなった。これらの結果から,各都道府県が定めるGIGA端末に関するルールは,児童・生徒の実態や活用ニーズに即したルールとなっていない可能性や各自治体の効果的なルールの設定にはルール設定状況の公開が重要であることが示唆された。

実践論文
  • 名知 秀斗
    2024 年 57 巻 p. 41-46
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     本研究では,動画学習を複数人で進める協同動画学習と,個人で進める個人動画学習とで,批判的思考態度の高まりに違いが生じるのか明らかにし,2つの動画学習の利点と課題を確認することを目的とした。調査の結果,批判的思考態度の下位因子の事前から事後への変化は,2つの動画学習の間で違いが生じないことが明らかとなった。また,協同動画学習の利点には,「考え方の広がり」「楽しさや嬉しさ」「教え合える」「協同ペース学習」が,課題には,「声が聞こえない」「時間が足りない」「意見を持たない人の存在」「意見が正しいか不安」「集中しづらい」が確認され,個人動画学習の利点には,「自己ペース学習」「静かで集中できる環境」「多くの考える時間」「楽」,課題には「交流できない」「教え合えない」「動画を飛ばす」「飽きる」「焦る」が確認された。

  • 佐藤 正範
    2024 年 57 巻 p. 47-53
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     インターネット利用時の子どもの安全を確保するために開発された「Web見守りシステム」を提案し,小学2年から6年の学級で運用した結果を報告する。本システムは,子どもがブラウザを使ってインターネットを利用した際に,WebログとしてURLをサーバーに蓄積することができ,学級担任と保護者は,専用WebサイトにアクセスすることでWebログをいつでも確認できる。Webログを参照しながら子どもと必要な話し合いや指導をすることで,インターネット利用の安全を考える機会をつくることを狙った。保護者と学級担任を対象にしたアンケート調査と聞き取りから,本システムの運用によって,子どもの学びの機会を著しく制限することなく,ある程度の安全が確保されたインターネット利用環境をつくることができた。学級担任,保護者,子どもの三者で本システムの導入目的を共有すること,インターネット利用のルールづくりを子どもと行うこと,Webログを利用した子どもへの指導やルールの再確認を適宜行うことは,子ども自身がインターネット利用の安全を考えるきっかけとして重要なことであった。

  • 岩居 弘樹
    2024 年 57 巻 p. 54-59
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     筆者が担当するドイツ語初級クラスでは,ドイツで日本語を学ぶ学生と日本側の学生が日本語とドイツ語でビデオを送り合う非同期型ビデオ交流を行っている。このクラスではビデオ撮影を活用したアウトプット重視の授業を行なっているが,ドイツの学生とのビデオ交流の場を設けたことで,ドイツ語学習に対するモティベーションが高まり,大きな達成感を得ることができている。本論文では,2017年から始まったこのビデオ交流を概観し,ビデオ撮影を中心とした授業とドイツとのビデオ交流に対する学生の意見を報告する。

  • ―小学校音楽科におけるファクト・チェックを前提とした授業実践より―
    北川 真里菜
    2024 年 57 巻 p. 60-65
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     本研究では,音楽鑑賞授業における生成AIの活用可能性について考察するため,小学校音楽科におけるChatGPT-3.5を用いた鑑賞授業の実施とその検討を行った。授業では,ChatGPTが示した楽曲の情報のファクト・チェックを前提として鑑賞活動を行い,下学年の児童に向けた楽曲の紹介文を作成する活動を実施した。本授業実践の振り返りより,生成AIの活用可能性として,音楽鑑賞時の視点の明確化,鑑賞の対象となる楽曲への関心の広がりの促進,メディア・リテラシーの育成,自らの感受や価値等を相対化するツールとしての位置付け,の四点が見出された。

研究ノート
  • ―「活動時間の増減」と「能力の重要度の変化」の調査を通して―
    可知 穂高, 塩田 真吾
    2024 年 57 巻 p. 66-70
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     本研究では,未来社会を見据えたキャリア教育の在り方を以下の2点の調査を通して検討した。情報分野の研究者(32名)を対象に,20年後の情報社会における「仕事・家庭・地域・余暇・学習」の「時間の増減」と,20年後の情報社会における「キャリア能力の重要度」の変化を尋ねた。その結果,「仕事」の時間は減少し「学習」と「余暇」の時間が特に増加すると判断される傾向にあり,キャリア教育では生涯の「余暇」や「学習」を充実させる学習が必要だと考えられた。また,能力は「人間関係形成・社会形成能力」や「課題対応能力」の重要度が特に高まると判断される傾向にあり,これら能力を優先して育成していく必要性が考えられた。

実践報告
  • ―適切な食生活を促すリアルタイム混雑情報システム―
    熊澤 典良, 池本 健太郎, 吉野 陽, 奈良 大作, 上谷 俊平
    2024 年 57 巻 p. 71-74
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     昼休みの大学食堂は学生および教職員の集中により大変混雑する。食堂にできた順番待ちの行列を見て昼食を諦める学生もいるが,日々の健康において規則正しい食生活は重要である。我々は適切に昼食を摂ることのできる学習環境の提供を目指し,混雑情報を提供するシステムを開発してきた。学生は本システムによる食堂のリアルタイムの混雑状況から,食事の時刻を調整するか売店で弁当を購入するかを決定できる。本論文は我々が新しく開発した混雑情報を可視化して提供するシステムについて述べ,本システムを用いて実施した実証実験によりシステムの開発目標が達成されたことを明らかにする。

  • ―知識及び理解・興味に関する意識に着目して―
    田島 貴裕, 土居 茂雄
    2024 年 57 巻 p. 75-78
    発行日: 2024/12/01
    公開日: 2025/06/03
    ジャーナル フリー

     文系初年次向けプログラミング演習を事例としてComputational Thinking(CT)を測定し,プログラミングに関する知識,電子工作の理解・興味に関する意識との関連性を検討した。演習に関する知識調査の結果,CTの平均値が高いほど,問題正解率は低くなる傾向にあった。演習後の理解・興味に関する意識調査の結果,各設問とCTには相関はみられなかったが,CTの高い方が各設問で「非常にあてはまる」と回答した割合は多く,理解できた,興味を持てたと強く実感した学生は多い傾向がみられた。

編集後記
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