コンピュータ&エデュケーション
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特集 「コンピュータが開く新しい学習評価・テストの可能性」
  • 光永 悠彦
    2023 年 54 巻 p. 16-22
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     受検者が受検したテストの問題項目に関わらず,同一の意味をもつようなテストの仕組みが提案され,語学テストの分野を中心に実用化されている。このようなテストの仕組みを実現するためには,項目反応理論(IRT)による能力尺度の共通尺度化の手続きが不可欠である。本稿では(1)大規模テストで用いられる項目バンク内の項目特性値を共通尺度化する手続きについてまず説明し,次に(2)項目特性値の応用手法としてコンピュータ適応型テスト(CAT)について述べ,最後に(3)パフォーマンステストの実践事例として京都工芸繊維大学英語スピーキングテスト(KIT Test)の共通尺度化について述べる。共通尺度化の実践にあたっては,能力尺度を等化するために,モニター受検者に対して異なる種類のテスト版を解答させることが必要となることがある。共通尺度化の手続きにより,均質な平行テスト版を用いてテストを実施でき,受検機会の増加や適切なテストの質のコントロールが期待される。

  • 熊谷 龍一
    2023 年 54 巻 p. 23-27
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     本稿では,筆者が開発した項目反応理論を分析するためのコンピュータプログラムであるEasyEstimationについての紹介を行う。EasyEstimationの開発背景やどのような設計方針で開発が進められたかについて述べ,またEasyEstimationで実行できるIRT分析の各機能(項目母数や受検者母数の推定等)について説明をした。最後に,EasyEstimationが用いられた研究事例として,文部科学省により実施されている全国学力・学習状況調査の一環である経年比較分析調査について紹介した。

  • ―全学教育科目を中心に―
    行木 孝夫, 本多 俊一, 小森 大地, 吉田 啓佑
    2023 年 54 巻 p. 28-33
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     オープンソースのオンライン数学演習システムWeBWorKの北海道大学における利用例を紹介する。特に全学教育における数学科目では2019年度から全てのクラスにWeBWorKを利用できる体制を整えている。WeBWorKは基本的なLinux,Apache,MySQL,Perlシステムであり,運用自体は難しくない。一方,シラバスに合わせた問題セットを提供することは簡単ではない。本稿では問題セットの開発,サポートなどの運用体制を中心に紹介する。

  • 藤本 和伶, 中村 泰之
    2023 年 54 巻 p. 34-41
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     タブレットPCを活用した学習では,学習ログデータを取得することができ,この学習ログデータを分析することで,学習者の弱点の把握や指導方針の改善に役立つことが期待されている。本研究では,徳島県内の公立高校で,数学IIIを学習している理系クラスの生徒39名を対象に,オンラインテストで数学IIIの内容である微積分6問を出題した。出題された問題について計算過程をデジタルペンを用いてタブレットに記述し,解答してもらい,記録されたペンストロークデータをもとに,解答過程,筆記速度,停滞箇所を可視化した。可視化により,どのような箇所で,どの程度停滞していたのかをもとにしてつまずいている箇所が明らかになった。また,各問題を解答後に自身の解答についての自信度をアンケートで回答してもらい,それを「正解」として,テストの正誤結果,ペンストロークデータなどをもとに,各問題の解答に対する自信度の推定を行った。「自信がある」と「自信がない」の2つの自信度は多くが正しく分類できた。しかし,「自信がある」と「自信がない」の2つの自信度と比較すると,「部分的に自信がある」は正しく分類できなかった。

研究論文
  • ―大学における未来を創造する能力を養うための教育の実施に向けて―
    三谷 なずな, 李 セロン, 柴田 悠基
    2023 年 54 巻 p. 42-47
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     技術的にさまざまなものが充足しており,テクノロジーの進化の方向性が不明瞭であり,予測不可能な事態により社会が急激に変化する状況において,目指すべき未来像を議論する必要性が増している。そのような状況において,近年,企業や教育の現場でSF的な発想で新しい社会ビジョンを発想するSFプロトタイピングが注目され始めている。本稿では,創作の素人だけで完結できるSFプロトタイピングの新しい手法を提案し,実証実験により検証したその有効性について報告する。その考察から大学教育の場で実施するための課題を検討し,本手法における可能性と今後の展望を述べる。

実践論文
  • 空谷 知之
    2023 年 54 巻 p. 48-53
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     オブジェクト指向型言語は,オブジェクトが主記憶装置に展開されるためハードウェアの役割が理解できないとプログラムの動作について理解が困難となる。しかし,ハードウェアはコンピュータ内部にあり,可視化ができないためハードウェアの視覚情報が乏しく学習が困難になる場合が多い。そこで本研究では商業高校のプログラミングの授業においてコンピュータのハードウェアをARによって拡張表示する教材開発を行った。教材は生徒の学習意欲の考慮のためARCSモデルを参照し設計した。教材の学習意欲の効果の検証のためAR教材を使用する群(実験群)と従来のプレゼンテーションによる教材を使用する群(対照群)に分け,ARCSモデルの4要素について学習意欲の質問紙調査を行った。結果として,実験群は注意,自信,満足感において学習意欲の向上の効果が見られた。

  • ―対面での実践結果との教育効果の比較―
    神垣 太持, 松本 慎平, 前田 暉正
    2023 年 54 巻 p. 54-59
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     本論文では,オンライン環境で「ものづくり」教育を実践する方法を示すこと,同様の内容で対面で実践した場合の学習効果と比較することを目的とする。Wi-Fi接続可能な小型のマイコンを用いたIoTシステムを開発する「ものづくり」教育において,オンライン環境で演習を行えるように,IoT開発キットの準備・配布,サポート資料の作成・配布,コミュニケーションツール(Teams)を用いた演習環境の構築を行い,授業を実践した。その結果,最終課題のスコアと学習での認知負荷のスコアにおいて,オンライン授業と対面授業で違いは認められなかった。学習の好感度,信頼度,適用度についてもオンライン授業と対面授業で違いは認められなかった。以上より,オンライン演習を対面と同じように実践できていたことが示唆された。

  • 小野田 哲弥, 柴田 明彦, 矢部 則之, 安倍 麻樹子, 田中 慎太郎
    2023 年 54 巻 p. 60-65
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     就職ミスマッチ問題の解消には,志望業界の景気動向と求められる人材像を理解する業界研究が不可欠である。諸大学において「業界研究」と題する授業科目は多く存在するが,特定業界の有名企業を研究対象にした知識伝授型の講義スタイルが主流である。本稿で報告する授業内容は,大人数ならではの特長を活かし,学生たちが「マス・コラボレーション」によって大規模企業データベースを構築し,当該データに対するクラスタリング結果を踏まえ「データドリブン」に業界研究を行う点に独自性がある。受講生に対するアンケート調査からも,演習を通して業界研究方法の修得が進み,知らない企業に対する興味喚起も促されたことが実証された。

  • ―「コンピュータの言葉プロジェクト」の試み―
    山岡 正和, 大前 智美, 岩居 弘樹
    2023 年 54 巻 p. 66-71
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     本研究は,高等学校2年生の「社会と情報」の授業において,大阪大学サイバーメディアセンター言語教育支援研究部門が行なっている複言語学習のフレームワークを用いたプログラミング教育における効果の検証を行なったものである。「言葉」という共通点を手がかりに,複言語学習のフレームワークを用いて複数のプログラミング言語を学習することで,各言語の違いや特徴,複数のプログラミング言語に共通する基本構造などに気付き,他の言語に応用できる知識やコンピュータに関わる知識が深まり,「プログラミング的思考」の育成に効果があるのではないかと考えた。生徒は複数のプログラミング言語を用いた学習活動を高く評価し,複数のプログラミング言語に共通する構造に気付くなど自律的な学習意識の高まりが確認された。

誤植のお詫びと訂正
  • 寺尾 敦
    2023 年 54 巻 p. 74
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/09
    ジャーナル フリー

    『コンピュータ&エデュケーション』Vol.53のp.52からp.57に掲載された研究論文

     

      学級の「1人1台端末」環境における教員のルールづくりの傾向と要因の分析

           酒井郷平・田中奈津子・髙瀬和也・中村美智太郎

     

    において,著者名と著者所属の対応に誤りが生じました。最終校正での著者からの修正指示を誤って理解してしまったことが原因です。著者にお詫びいたします。

     当該論文での著者名と著者所属の対応を以下に示すように訂正いたします。

     

    (誤)常葉大学教育学部 酒井郷平・静岡大学教育学部 田中奈津子・

       静岡大学教育学部 髙瀬和也・鹿児島大学大学院教育学研究科 中村美智太郎

     

    (正)常葉大学教育学部 酒井郷平・静岡大学教育学部 田中奈津子・

       鹿児島大学大学院教育学研究科 髙瀬和也・静岡大学教育学部 中村美智太郎

編集後記
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