2021 年 51 巻 p. 46-51
本稿では,諸外国と日本のコンピュータサイエンス(以下,CS)教育のカリキュラムのタイムラグに関する状況を調査することで,今後発生する新たな社会的要請や研究成果をCS教育のカリキュラムにタイムラグ少なく導入していくための改善の方向性について日本が示唆を得ることを目的とした。その結果,カリキュラムの変更時期であることを認識した後実際に改訂カリキュラムを起草するまでに要する時間である意思決定のタイムラグに関して,日本は課題があることが示唆された。日本のような定期的なカリキュラムの更新サイクルは,持続性や効率性の観点から多くの国で採用されているものの,新たな社会的要請や研究成果への迅速な対応が難しいとされる。日本においては,継続的な部分改訂を可能にするカリキュラム・フレームワークの仕組みの設計が,社会的要請や研究成果をカリキュラムにタイムラグ少なく導入していくための改善の一つの方向性として示される。