1999 年 6 巻 p. 88-93
教育現場へのコンピュータ導入の増加にともなって、多くのCAI教材やマルチメディア教材が開発され、教育に利用されている。しかし、教材そのものや教材の教育効果についての評価法や評価基準が、現在のところまだ確立されていないことから、語学教育の現場でのCAIに関する研究の多くは、開発に関するものである。そこで、筆者は独自に開発した日本語CAI教材を利用した授業を通して、効果的なCAI時の指導法の開発を目指すこととした。この論文はその実際について述べるものである。本実験は、日本語CAI学習時の音声ヒント利用法指導が、学習者の学習を促進することを検証するために行った。59人の被験者を実験群と統制群にわけ、さらに成績上位グループと下位グループに分けて行った実験の結果、文法CAI時には音声ヒント利用法指導の効果が認められなかったが、漢字および語彙CAI学習時にはその効果が認められた。音声ヒント利用法指導の効果に影響を与える要因は、音声ヒントの性質、学習する項目などが考えられる。効果的なCAI時の指導法を開発していくためにも、また、より効果的なCAI教材を開発していくためにも、今後、これらの要因について研究を進め、成果を蓄積していく必要があると思われる。