日本蚕糸学雑誌
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家蚕血液のチロシナーゼ (III) 外傷を受けた蚕児
入戸野 康彦竹下 弘夫
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1953 年 22 巻 6 号 p. 239-242

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抄録

5齢2日目或は8日目 (熟蚕期) にその尾角を切り外傷を与えた蚕児の血液のチロシナーゼ作用を何等の処理をも加えない対照区の蚕児のそれと比較した。測定にはWARBURGの検圧計を用い, p-cresol 或は brenzcatechin を基質として加えた場合の血液の酸素消費量を以てチロシナーゼ作用をあらわした。その結果蚕児の血液のチロシナーゼ作用は外傷により活性化され対照区の蚕児のそれに比して大きく, 処理後3時間目に最大の開きを示した。しかしその後10時間目, 20~25時間目と漸次その開きが小さくなり, 35時間目には対照区と同一の値にまで復した。
外傷を加える時期が5齢2日目であつても熟蚕期であつても全く同じ傾向を示したが前者の場合の方がチロシナーゼ作用活性化の程度が大きかつた。又基質としてp-cresol を用いても brenzcatechin を用いてもその傾向は全く同じであつたが, 後者の場合の方が活性化の程度が大きかつた。かくの如く蚕児の血液のチロシナーゼが外傷によつて活性化されるという事実はその機構は明かでないがチロシナーゼが外傷に伴う有害な影響を除去する役割を果していることを示唆しているものと思われる。

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