日本蚕糸学雑誌
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天柞蚕飼育樹としての櫟樹枝條の伸長生長について
山崎 寿西村 国男田口 亮平
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1953 年 22 巻 6 号 p. 269-272

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抄録

1. 栽植10年目の櫟樹を地表面近くで伐採し再生した枝條のうち一本を伸長せしめて主幹とし, その葉腋の夏芽の伸長による側枝の長さを測定した。而して翌年冬芽の着生位置と新梢の伸長生長との関係について調査した。
2. 櫟樹の冬芽は5月中旬に萠芽を始めて, その後1年生枝條の伸長生長は6月上旬に一時生長の停止期があり, 6月中旬再び生長を開始し, その後7月下旬乃至8月上旬生長が停止する。1年生枝條の生長中途に於て一時生長の停止乃至減退期が出現するのは, 新梢の先端に於ける土用芽の形成によるものと思われる。
3. 新梢の生長をその中途に於ける生長停止期を境として前後二つの生長環に分けてREBERTSON氏の生長式にて表示すると実測値と計算値とは良く一致する。
4. 一年生主幹葉腋の夏芽の伸長による側枝の長さは下方より生づるもの程大で上方になる程次第に小となる。二年生の主幹上部に直接着生する冬芽の伸長による側枝の長さは先端のものほど大で下方に於て小となる。その結果主幹の先端より下方全長の1/3位のところより直接生づる側枝が最も短く, その上方及び下方に着生する側枝の長さはこれより明かに大である。
5. 二年生主幹の略々中央部より上方に, 上枝中枝及び下枝の三つの新梢を選び, その各々の伸長生長の状態をROBERTSON式のKによつて比較すると, 上位の新梢程前期及び後期の生長を通じてKの値が大で, 生長曲線の上昇が急激である。又新梢の生長量Aは, 前期及び後期を通じて, 下位の新梢が最も多く, 上位の新梢が之に次ぎ, 中位の新梢が最も少い。

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