日本蚕糸学雑誌
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家蚕中腸型多角体病における潜在感染
有賀 久雄福原 敏彦
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1961 年 30 巻 4 号 p. 334-338

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抄録

卵面に4角形多角体浮遊液を塗布し, その卵から孵化した蚕のなかで5令まで達したものについて, 一部は無処理でまた一部は低温処理を行ない, 熟蚕期まで飼育して中腸型多角体病の発生状態を調査した. 比較的高濃度の多角体液を塗布した場合には, 卵面塗布を行なわない場合に比べて, ずっと高率に4角形多角体が形成された病蚕が現われたが, 比較的低濃度の多角体液を塗布した場合には, 卵面塗布の影響はみられず, 6角形多角体が形成された病蚕が多かった. これらの実験結果から, 孵化時に食下された4角形多角体ウィルスは, 蚕体内で多角体を形成するまでに至らぬ状態で長期間保持され, 5令期になって活発に増殖をはじめる場合があると考えられる. この潜在状態のウィルスは, あとから経口接種された異種ウィルスに干渉しないような状態であり, また感染実験によって検出されにくいような状態だと推測される.

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