日本蚕糸学雑誌
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30 巻, 4 号
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  • 宇尾 淳子
    1961 年 30 巻 4 号 p. 295-304
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    エリサンの前半除去蛹や除脳蛹に, 幼虫・蛹・成虫の脳・前胸腺・アラタ体等を移植して, 羽化あるいは超過脱皮を起こさせて後, その生殖腺の発達をしらべた. 精巣の発達をしらべるには, 生きた被嚢のままその発達段階を統計的に調査し, 卵巣の発達をしらべるには, 解剖して卵殻をもった完成卵と, その他の卵とを全部計算した.
    1. 前半除去蛹に熟蚕の前胸線2個, 5令・蛹・成虫の脳3個をそれぞれ移植すると, 宿主はいずれも羽化する. ところが除脳蛹に熟蚕のアラタ体6個を移植すると, 移植された個体の約%は羽化し, 残り4/5は超過脱皮して第二次蛹となる. これら羽化個体の精巣の発達をみると, 5令前胸腺2個の場合は自然羽化の場合と変わらず, 大部分の被嚢が完成した精子束となっている. 脳3個の場合はそれよりやや劣っている. アラタ体6個の移植によって羽化した個体では, 前二者の場合と異なって精子形成は大分おくれ, 精原細胞嚢や精母細胞嚢がまだ相当残っていた.
    2. 除脳蛹や前半除去蛹に4令幼虫や成虫のアラタ体のみ6個, または脳+側心体+アラタ体3個を移植すると, これらの宿主はいずれも第二次蛹となる. さきの熟蚕のアラタ体の移植による第二次蛹もこの場合の第二次蛹も同じであるが, これらの再蛹化個体の精巣は羽化個体のそれよりもはるかに発達が劣っているが, 脳や前半を除去したまま放置しておいた個体よりも, 発達は相当すすんでいる. また前半除去蛹が再蛹化した場合よりも除脳蛹が再蛹化した場合の方が発達がよいように思われる.
    3. 踊化直後の無処理の蝋では過半数は精母細胞嚢であり, 精子束はごく筐かしか存在しない. ところが前半または脳を除去して後17~340日経過してからしらべると, 精子束が少し多くなっている. しかしながら前半除去後20日のものでも, その発達程度は変わらない.
    4. 除脳踊に蠣の脳3個, 脳+側心体+アラタ体3個, アラタ体6個を移植しても, アラタ体のみを除去してもこれらの踊は羽化する. この場合, 卵数は創傷のみをほどこした対照区と大差ない. また前半除去蝋に脳3個, または前胸腺2個を移植して得られた羽化個体では, 多少卵数が減少しているが, これは卵巣が発達するのに必要な場所の不足のためではないかと考えられる.
    5. 前半除去踊が再蝋化した場合には, 卵の発達は全くみられない.
    6. これらの結果から, エリサンではその生殖腺の発達を促す要因は前胸腺, または脳から分泌される “成長・分化ホルモン” であり, その発達を抑制している要因は, 幼虫や成虫のアラタ体から分泌される “幼若ホルモン” であると考えられる.
  • (I) 幼虫の脂肪組織におけるグアニンー
    林 幸之
    1961 年 30 巻 4 号 p. 305-312
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕幼虫の脂肪組織におけるアデナーゼ, グアナーゼおよびキサンチン脱水素酵素の存在を分光々度法によって調査した結果
    1. 脂肪組織の酵素液はヒポキサンチン, キサンチンを酸化する以外にアデニン, グアニンの分解をも触媒することが判明した. これらの基質のうちグアニン, ヒポキサンチンおよびキサンチンは極めて早く酸化され, グァニンーキサンチン酸化酵素系の活性度の高いことが明らかになった℃ これに反してアデニンの酸化能は低く, アデナーゼ活性度の低いことが判明した.
    2. 蚕家の尿酸生成についてプリン代謝を中心にして論議した.
  • (II) 卵巣および卵の発育過程における越年卵ならびに不越年卵のチトクローム・オキシダーゼについて
    上田 金時
    1961 年 30 巻 4 号 p. 313-318
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕蛹の卵巣および卵の発育にともなうチトクローム・オキシダーゼ活性度の消長をスペクトロフォトメーターによって測定してその消長を追究した.
    1) 休眠性蛹および非休眠性蛹にかかわりなく, その卵巣の生体重 (g) 当りのチトクローム.オキシダーゼ活性度は化蛹後の経過と共に減少し, その活性度は栄養細胞の機能と密接に関係しているものと考えられる.
    2) 越年卵は産下後より休眠中をほとんど変化なく低いチトクローム・オキシダーゼ活性度で経過する.
    3) 卵の発育過程におけるチトクローム・オキシダーゼ活性度は不越年卵, 越年卵の浸酸による人工孵化種および休眠経過後の越年卵ともにいずれも発育の進むにしたがって増加する.
  • (III) 5令幼虫の中腸におけるチトクローム・オキシダーゼの消長とチトクローム成分について
    上田 金時
    1961 年 30 巻 4 号 p. 319-324
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 家蚕の5令幼虫の中腸におけるチトクローム・オキシダーゼ活性度を窒素mg当りで求め, 5令期における消長をしらべた結果, 3日目に最高値に達し, 上族前日の6日目には1/3以下に減少し, 吐糸営繭中にはさらに1/6以下に低下する.
    2) 差スペクトル法により, 幼虫中腸にチトクロームa+a3, cおよびフラボプロテインの吸収がみとめられ, さらに425~430mμ, 525~530mμ および555~560mμ に吸収をもつチトクロームb5とみなしうる吸収がみとめられた.
  • (II) 抽出物の化学的性状
    河北 俊彦
    1961 年 30 巻 4 号 p. 325-327
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • 石川 誠男, 平尾 常男
    1961 年 30 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    第9神経球から派出される神経束中の運動神経, 感覚神経のimpulse放電を銀線電極, RC増巾器, ブラウソ管オヅシロスコープ, カメラ等を用いて観察記録し次の結論を得た.
    1) 第9神経球の神経束中の運動神経の活動は感覚入力や感覚入力をもった他の神経球の存在によって興奮あるいは抑制をうける.
    2) 運動神経が他から神経連絡を絶たれた場合には自発性放電を行なう.しかし自発性放電をする神経は各神経束についてほぼ限られた数種類のものであって, それらは非常に規則正しく周期的に放電を続ける.
    3) 各神経束中の運動神経は複眼に光刺激を与えた場合に光の明暗の変化に伴う反射としての放電を示す.神経の中には応じやすいものと応じにくいものとがあり, また応じ方もその時によって異なっている.
    4) 交感神経を除く各神経束中には感覚神経が含まれており, n1中には側唇感覚毛の接触刺激を伝える神経が, n2, n3, n4中には側唇およびその附近の動きに応ずる神経が, n5n6, n7中には腹部の動きに応ずる神経が含まれている.n1を除く他の神経束中の感覚神経は大部分自己感受器官の一種である筋張力受容器からのものと推測した.
  • 有賀 久雄, 福原 敏彦
    1961 年 30 巻 4 号 p. 334-338
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    卵面に4角形多角体浮遊液を塗布し, その卵から孵化した蚕のなかで5令まで達したものについて, 一部は無処理でまた一部は低温処理を行ない, 熟蚕期まで飼育して中腸型多角体病の発生状態を調査した. 比較的高濃度の多角体液を塗布した場合には, 卵面塗布を行なわない場合に比べて, ずっと高率に4角形多角体が形成された病蚕が現われたが, 比較的低濃度の多角体液を塗布した場合には, 卵面塗布の影響はみられず, 6角形多角体が形成された病蚕が多かった. これらの実験結果から, 孵化時に食下された4角形多角体ウィルスは, 蚕体内で多角体を形成するまでに至らぬ状態で長期間保持され, 5令期になって活発に増殖をはじめる場合があると考えられる. この潜在状態のウィルスは, あとから経口接種された異種ウィルスに干渉しないような状態であり, また感染実験によって検出されにくいような状態だと推測される.
  • 石川 義文, 浅山 哲
    1961 年 30 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕中腸型多角体病における多角体感染量を多角体の保存年数, 条件および蚕の発育階梯, 飼育環境との関連において検討した。
    1) 乾燥状態で室温に保存したCPの毒力は保存年数の長短によって差があり, 卵面塗沫接種によるLD50は保存年数が0 (新鮮) のとき1.44×106/ml, 1年のとき42.6×106/ml以上, 4年のとき169×166/ml以上であった。また保存条件の相違によっても差を示し, 2年間水浸保存のCPでは251×106/ml以上であった。
    2) 接種するCP量が一定の場合, その感染率は蚕の発育がすすむにつれて低下するが, 各令起蚕については令が若いほど感染しやすい。
    3) 同一発育階梯にある蚕について同一量のCPを接種した場合の感染率は, その栄養状況や飼育環境の相違によって異なり, 高温多湿無気流および気温激変等の飼育環境や早期停食就眠, 起蚕の絶食等の栄養障害によって高まる。
  • 渡部 仁
    1961 年 30 巻 4 号 p. 345-350
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    産卵数を中心にして交雑F1と両親系統の産卵性を比較した。その結果を要細すれは次のとおりである。
    1蛾の平均産卵数において交雑F1は顕著なヘテローシスを示し, 産卵数の蛾区的変異は両親原種より小さかった。また交雑F1は両親原種より1日目の産卵数が多く, 2日目の産卵数は少なく, しかもそれぞれの蛾区的変異が小さいばかりでなく, 明らかに総産下卵に対する1日目の産下卵の割合が多かった。一方交雑F1は両親原種に比べて発蛾が斉一であり, 最多発蛾当日における産卵数も多いので採種能率が良好であった。産卵に対する生理的効率 (産卵数/蛹体重) は原種よりも交雑F1で高く, また産卵数におけるヘテローシスは蛹体重におけるヘテローシスの直接的影響を受けなかった。
  • 福原 敏彦
    1961 年 30 巻 4 号 p. 351-353
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    EDTAおよびそのナトリウム塩を発育段階の異る蚕児に添食して多角体病発生率の大小を比較した。中腸型多角体病の誘発に関してはEDTAのほうがNa-EDTAよりも効果が大である。0.1M EDTAを添食した場合に蚕の令による誘発傾向の相違が顕著に認められ, 1~2令添食および3令添食ではほとんど誘発は認められないが, 4令添食ではある程度中腸型多角体病の誘発が起り, 5令添食では発病率は極めて高くなる。
  • (VII) 桑の各部位におけるラフィノースおよびスタキオースの消失と出現の順序
    柏田 豊
    1961 年 30 巻 4 号 p. 354-358
    発行日: 1961/08/31
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    桑樹1本として全体的にみた場合の春, 秋期のラフィノースおよびスタキオースの消失, 出現の順序ならびにその際の部位間の相互関係についての試験結果の概要は次のとおりである.
    1) 春期における両糖の消失はいずれの部位とも定則どおり, スタキオース→ ラフィノースの順であり, スタキオースの消失順序は主根・支根→ 条→ 芽, ラフィノースのそれは条・支根→ 主根→ 芽の順である.
    2) 秋期における出現も定則どおり, ラフィノース→ スタキオースの順であり, ラフィノースの出現順序は芽→ 支根→ 主根・条, スタキオースのそれは芽→ 条→ 主根・支根の順である.
    3) 根に冬期間貯蔵された両糖は春の桑樹活動開始に当り, まずスタキオースが消失し, 秋期においては最後に出現し, 根の特性に合致すると思われる行動をする.
    4) あらかじめ地上部を伐採した根だけの区では, 春期のスタキオースの消失は対照区と変らぬが, ラフィノースははるかに遅れ, 秋期のラフィノースの出現ははるかに遅れるが, スタ, キオースは変らない. 地上部の有無と無関係に, 根だけでも両糖とも消失し, または出現するが, 両糖間では傾向が異なり, とくにラフィノースにおいて地上部の影響が認められる.
    5) 条の糖の流動性実験では, 12月および4月の条であらかじめ組織を蒸殺したものでは含有糖のすべてが流出するが, 生存条ではフラクトースを主体にこれと少量のグルコースだけが流出する. ラフィノースおよびスタキオースは貯蔵物質として存在し, 分解の結果消失し, 直接転流は行なわれぬものと推測される.
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