日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
絹糸蛋白質の形成に関する生化学的研究
(XIII) 家蚕におけるグリコール酸からグリシンの生成
福田 紀文亀山 多美子
著者情報
ジャーナル フリー

1961 年 30 巻 6 号 p. 437-441

詳細
抄録

1) 蚕体内におけるグリシン生合成の主要な代謝径路の1つはグリオキシル酸-グリシソ径路である。本報ではこのグリオキシル酸がいかなる物質から由来するかを明ちかにする目的でグリコール酸-1-C14を用いて実験を行なった。
2) 0.5μc/頭のグリゴール酸-1-C14を5令期の蚕に与え, これらの蚕が生産したフィブロイソからグリシソ等を, その体液からグリオキシル酸を2, 4-ジニトロフェニルヒドラゾソとして単離し, それぞれの放射能を測定した。分離したグリシンについては分子内のC14分布を明らかにするためDegradationを行なった。
3) 放射性フィブロイソから分離したアミノ酸のうちグリシンがとくに強い放射能活性をもち, その放射能のすべてはカルボキシル基の炭素に存在していた。また体液から分離したグリオキシル酸にも強い放射能の存在を認めた。これらの成績は蚕体内でグリシソがグリオキシル酸を経てグリコール酸から生成されることを示している。
4) グリコール酸はグリシンの生合成に関与するばかりでなく, アラニンおよびセリンの生合成にも関与している。

著者関連情報
© 社団法人日本蚕糸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top