日本蚕糸学雑誌
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人工飼料による蚕の消化試験
(II) 飼料に添加したセルロース粉末の影響
向山 文雄伊藤 智夫
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1962 年 31 巻 6 号 p. 398-406

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抄録

飼料組成の相違による蚕の消化形態の異同を調べる目的で, セルロース粉末添加量を20, 35または50%とした夫々の人工飼料を用いて消化試験を行ない, 消化様式が組成の相違により異なることを明らかにした。
セルロース粉末添加量の多い飼料では蚕の成長・発育が良好であった。この場合, 飼料食下量は増大したが消化量には特に変りがなく, したがって消化率は低くなった。この低い消化率は主として蚕がセルロース粉末を消化しないためである。次に可消化部の消化形態の比較を行なった。単位生体重増加に必要な可消化部の乾物食下量はとくにセルロース粉末50%を含む飼料の場合が常に少なく, また同時に消化量も少なかったので, その限りにおける飼料効率の増大が明らかであった。
セルロース粉末量の多くなるにつれて排出糞数が増加し同時に1個当たりの糞が重くなり, 結果として排出糞重が増大した。しかし単位乾物食下量当たりの排出糞数にはほとんど変化がなく, また乾物食下量と糞数との間には有意性のある高い相関が認められた。この事実から食下量を糞数で判定する方法の妥当性に論及した。

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