日本蚕糸学雑誌
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家蚕絹フィブロインの過酸化水素と紫外線による酸化的相乗脆化作用
桑原 昂筒井 亮毅渡辺 忠雄
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1970 年 39 巻 1 号 p. 12-17

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抄録

家蚕絹フィブロインの過酸化水素による酸化と紫外線による光脆化との相乗作用において, その強伸度および電子顕微鏡で観察される特異な陥沒現象が, どのように推移するかを究明した。
(1) 過酸化水素と紫外線による酸化的相乗脆化において, 強力は過酸化水素酸化時間に比例して低下するが, 伸度の変化は僅少である。また微細構造各領域量変化についても, 準結晶領域量の増加, 結晶領域量の減少傾向は, 過酸化水素酸化時間に比例して顕著となることから脆化にともなって当然結晶領域量の崩壊も想定される。
これらの現象は, 染料吸着量, 黄褐変着色度などの結果からも, 明らかに酸化的相乗作用に起因するものと考えられる。
(2) 電子顕微鏡で観察される特異な陥沒現象との関係は, 過酸化水素酸化時間とともに, 多孔性軽石状から蜂巣状小陥陥沒へと変化し, ついには繊維軸方向の随所において切断, 陥沒する。

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