日本蚕糸学雑誌
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カイコの黒蛹におけるフェノールオキシダーゼ系について
橋口 勉吉武 成美土屋 洋子
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1970 年 39 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

1. 黒蛹系統であるBTと正常蛹色系統の伊達錦ならびに大造を材料として, その体液からプロフェノールオキシダーゼを分離, 精製するとともに, 皮膚からは活性化物質を抽出してプロフェノールオキシダーゼの活性化を行なった。その結果プロフェノールオキシダーゼに関しては, BTが活性が一番強く以下伊達錦>大造の順であった。一方活性化物質については, これと丁度逆で大造>伊達錦>BTの関係にあることが判明した。
2. 精製したプロフェノールオキシダーゼを薄層電気泳動法で比較検討した結果, 黒蛹系統は正常系統に比し泳動性に差異が認められた。しかし庶糖密度勾配法ならびにシュリーレンパターンによる分析では三者間に顕著な差異は認められなかった。
3. 皮膚から抽出した粗活性化物質をセフアデックスG200でゲル分劃して種々しらべた結果, 活性化物質には少なくともA, B2種類の成分が存在し, 黒蛹系統は正常系統に比して一般に活性化物質が量的に少ないが特にB成分が少ないことが判明した。そしてこれらの結果は電気泳動的にも確かめられた。
4. 5令未期から化蛹3日目までの種々の時期における体液プロフェノールオキシダーゼの量的変化を電気泳動的に比較検討した結果, 吐糸終了期以後から化蛹直後までの期間において黒蛹となる個体と正常蛹色となる個体との間に顕著な差異が認められた。
5. 以上の結果を黒蛹の発現に関与する3つの要因すなわち, bp遺伝子, 感温期の保護温度および黒蛹色決定ホルモンとの関連において考察を行なった。

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