日本蚕糸学雑誌
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カイコの核多角体病の発病におよぼす昆虫ホルモンの影響
小林 勝山口 定次郎
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1970 年 39 巻 1 号 p. 33-36

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抄録

カイコにNPVを接種した場合, その後の発病が内分泌生理的な影響を受けるか否かを検討した。供試品種に日124号×支124号を用い, 5齢起蚕および上蔟前期の幼虫にウイルスを接種して後, 前者はそのまま, 後者は吐糸開始後20~30時間目に, 結紮によって遊離腹部を作成し, 内分泌生理的な働きを制御するようにした。この材料蚕に, 昆虫ホルモンである inokosterone および ecdysterone をそれぞれ注射し, 滅菌水を注射したものを対照とし, 発病蚕数を調べ, その影響をt検定で比較したところ, つぎの結果を得た。
1. 内分泌生理的に制御しない場合には, ウイルス接種後の発病におよぼすホルモンの注射による影響に有意差が認められなかった。
2. 内分泌機能を制御した遊離腹部での実験では, 夏蚕期, 晩秋蚕期ともにウイルス接種後の発病にホルモン注射による明確な影響を認めた。すなわち, ウイルス接種後に昆虫ホルモンで人為的に化蛹させるような処理を施すと感染発病率を増すという結果をえたので, カイコのNPVの感染に対しては内分泌生理が関与しているものと考えられる。

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