日本蚕糸学雑誌
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カイコの卵母細胞における2MeV中性子線およびX線誘発突然変異反応の比較
町田 勇
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1975 年 44 巻 1 号 p. 11-16

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抄録

カイコの化蛾前の雌蛹 (減数分裂前期の後半の卵細胞) に2MeVの中性子線および200kVpのX線を照射し, その突然変異誘発頻度を比較した。中性子線では全体突然変異体および部分突然変異体ともに線量に正比例して上昇するが, X線では全体突然変異体において2ヒット的な線量効果関係が見られた。これはX線の低線量域では回復現象が存在することを示唆した。一方, 部分突然変異体頻度 (F) と全体突然変異体頻度の比率 (F/W) はいずれの遺伝子座でも約0.1であった。またpe座位とre座位についての変異頻度の比較を行ったところ, X線, 中性子線ともに全体突然変異体ではre座位の方が明らかにpe座位より高い結果を得た。一方, 部分突然変異体ではpe座位の方が明らかに高い結果が得られた。また2MeV中性子線の200kVp X線に対する生物効果比 (RBE) を求めると突然変異誘発率が0.5%のところで3.0, また1.5%のところで1.8であった。このように, 突然変異の水準でRBEが異なるのはX線の線量-効果関係が2ヒット的であることによるものと考察した。

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