日本蚕糸学雑誌
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蚕の人工飼料育における温度および光条件について
V. 飼料組成を異にした場合の幼虫期の温度および光線が眠性および化性に及ぼす影響
高宮 邦夫
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1975 年 44 巻 1 号 p. 21-25

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抄録

人工飼料育蚕 (蚕品種は宝鐘) の眠性および化性に関して, 飼料条件のうち, 主として人工飼料に添加する桑葉粉末と大豆粉末の添加量をそれぞれ変えた場合の影響について試験を行なった結果, つぎのことがわかった。
1. 飼料中の大豆粉末添加量を変えた場合, 3眠蚕は, 大豆粉末添加量の少ない飼料区では30℃恒明の場合 (62%) のみ見られたが, 大豆粉末添加量の多い飼料区では30℃恒明で100%, 30℃短日 (8L・16D) で4%出現した。また5眠蚕の出現は人工飼料に添加した大豆粉末量の多少にかかわらず20℃, 恒明においてのみ著しく高率であった。一方, 人工飼料育蚕の化性に関しては, 飼料に添加した大豆粉末量の多少および幼虫期の温度の高低にかかわらず, 短日条件で経過した蚕の蛾は越年卵のみを産下し, 幼虫期を恒明条件で経過した蚕の蛾は不越年卵のみを産下した。
2. 飼料中の桑葉粉末と大豆粉末の添加量を種々変えた場合, 3眠蚕は飼料中の大豆粉末添加量の増加に伴いその出現率は高くなり, 大豆粉末添加量のきわめて少ない飼料区では全く出現しなかった。一方, 人工飼料育蚕の化性に関しては, 桑葉粉末と大豆粉末の添加比の大小にかかわらず, 幼虫期を恒暗および短日 (8L・16D) 条件で経過した蚕の蛾は越年卵のみを産下し, 長日 (16L・8D) および恒明条件で経過した蚕の蛾は不越年卵のみを産下した。
3. したがつて, 人工飼料育蚕の眠性は, 人工飼料中の大豆粉末量および幼虫期の温度と光線により, 一方, その化性は, 幼虫期における日長時間によりそれぞれ顕著な影響をうけたが, 飼料中の大豆粉末と桑葉粉末との割合および幼虫期の温度が化性に与える影響は大きくなかった。

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