1977 年 46 巻 4 号 p. 306-312
軟化病ウイルス (IFV), 小型軟化病ウイルス (SFV), または細胞質多角体病ウイルス (CPV) に感染したカイコ幼虫の高温処理による発病抑制を追究した。
各脱皮期毎に37℃で24時間高温処理を行うことによって, 致死量のIFVを接種したふ化幼虫を営繭に導くことができた。高温処理の適期は眠中~脱皮後12時間までであり, この時期には処理効果が顕著であるが, 脱皮後24時間以降では営繭幼虫はみられなかった。なお, 脱皮直後の幼虫に対しては6時間の高温処理でも治療効果がみられた。
SFV感染幼虫を37℃で処理するとSFVの増殖が阻止され, 脱皮期ならびに高温処理期間中に中腸皮膜組織のSFV抗原量が減少した。一方, CPVでは37℃で多角体形成が顕著に阻害され, またCPV感染中腸細胞は脱皮期に脱落し新生細胞で補填された。
これらの結果から, 高温処理がIFV, SFVおよびCPV感染幼虫の治療に有効であることが明らかにされた。