日本蚕糸学雑誌
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蚕糞中の抗菌性物質
II. 異なる飼料組成にて飼育した蚕糞中の数種フェノールカルボン酸量の比較
飯塚 敏彦小池 説夫水谷 純也
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1977 年 46 巻 4 号 p. 325-330

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抄録

桑葉育ならびに人工飼料育の蚕糞中に含まれるprotocatechuic acid (PA), p-hydroxybenzoic acid (HA) および caffeic acid (CA) の定量を行った。これら3物質の定量は, 抗菌性物質を含む酢酸エチル可溶物をTMS化し, ガスクロマトグラフィー (GLC) によって行った。
その結果, 桑葉育においてはPAが抗菌性物質の主成分であること (乾燥糞当り0.173%) ならびにHAも検出されたがCAは検出されなかった。一方, 人工飼料育においては桑葉粉末を添加した人工飼料育蚕糞中にはPA, HAが検出されるとともにCAも検出された。PAの量は桑葉育蚕糞の約1/3~1/4であった。
桑葉粉末を含まない飼料 (LP0) においては, 3物質はいずれも検出されなかった。
LP0飼料に1% chlorogenic acid を添加して飼育した区から得た蚕糞ではPAとCAか検出された。
クロラムフェニコールを除去したLP50飼料による無菌飼育ならびに staphylococcus epidermidis 単一種を添加して飼育した区から得た蚕糞では, 対照区に比べ量的に3物質とも顕著な差が認められなかった。
LP25飼料にPA, HA, CA, quinic acid (QA), p-coumaric acid (pCA), quercetin (QU) をそれぞれ添加して飼育した区から得た蚕糞では, 3物質の定量の結果, CA添加区でPAが増大すること, なちびにpCA添加区でHAが増大することが明らかになった。
なお, これらのフェノールカルボン酸類添加飼料の家蚕若齢幼虫におよぼす成長促進効果は, CA, pCAおよびPAにおいて顕著に認められ, QUとQAにおいて成長阻害が認められた。

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