日本蚕糸学雑誌
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蚕に寄生する Aspergillus 属菌のホルムアルデヒド抵抗性に関する研究
I. 本属菌のホルムアルデヒド酸化作用について
柳田 健郎西城 澄雄
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1977 年 46 巻 4 号 p. 347-352

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抄録

Aspergillus flavus-oryzae 系菌種の中からホルムアルデヒド抵抗性を異にする菌株を選び, 培養による培地中のホルムアルデヒドの消失および菌体抽出液によるホルムアルデヒド酸化作用とホルムアルデヒドに対する抵抗性の関係を調べ, 次の結果を得た。
1. 供試菌をホルムアルデヒド添加培地に培養すると菌の発育に伴って培地中のホルムアルデヒド量が著しく減少した。また, 菌体抽出液を作用させてもホルムアルデヒド量の著しい減少が認められた。この現象は菌株間のホルムアルデヒド抵抗性と平行的であった。
2. 菌体抽出液によるホルムアルデヒドの酸化はホルムアルデヒド添加培地による培養によって著しく増加し, 抵抗性の弱い菌株ほど顕著であった。
3. 菌体抽出液によるホルムアルデヒド酸化作用は50℃の温度処理によって著しい減少が認められ, 60℃, 5分間処理で完全に消失した。
また, 金属イオンによる菌体抽出液のホルムアルデヒド酸化作用はCaCl2, CuSO4, LiSO4, Na2SO4およびZnSO4によって著しく阻害された。
4. 培養滬液および菌体抽出液によるホルムアルデヒド酸化作用を比較した結果, 培養汚液による作用は微弱であったが, 菌体抽出液では著しく強い酸化作用が認められた。
5. 菌液抽出液をホルムアルデヒドに作用させると, ホルムアルデヒド量の減少にともなって, 定性的あるいは定量的にもギ酸の生成が認められた。

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