1982 年 51 巻 6 号 p. 517-522
黄きょう病蚕体液中の遊離アミノ酸組成の変動と, この変動に黄きょう病菌自体のアミノ酸代謝がどの程度関与しているかを検討した。感染末期では病蚕体液中のグルタミン酸, システィン, チロシンの含量が健康蚕より大きく, 一方アスパラギン酸, グルタミン, プロリン, アラニン, パリン, イソロイシン, アルギニンの含量は健康蚕より小さかった。黄きよう病菌培養滬液では, セリン, オルニチン, メチオニンの含量が培養3日間で増加し, 一方グルタミン酸, ランチオニン, バリン, ロィシン, リジン, アルギニンの含量が減少した。以上の結果から, 黄きょう病蚕の感染に伴う体液遊離アミノ酸組成の変動は, 主に宿主カイコの生理変化によるものであり, カイコ体液中で増殖している黄きょう病菌のアミノ酸代謝の直接的な影響でないと推察された。