日本蚕糸学雑誌
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カイコから新たに分離された濃核病ウイルスの化学的性状
栗原 浩渡部 仁前田 進清水 孝夫
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1984 年 53 巻 1 号 p. 33-40

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抄録

長野県佐久市の農家に発生した軟化病蚕からウイルスを分離し, その化学的性状を調査した。ウイルスは直径23-24nmの球状を呈し, 中腸円筒細胞の核内で増殖した。SDS-ポリナクリルアミド・ゲル電気泳動法により, ウイルスの構造蛋白は分子量がそれぞれ121,000, 116,000, 53,000および50,000の4種のポリペプチド (P1, P2, P3, P4) より成り, P1とP2, およびP3とP4のペプチド・マップがきわめて似ていることを明らかにした。ウイルスは単鎖DNAを含み, 高塩濃度下でウイルスDNAを抽出すればアニーリングを起こして複鎖型となり, 低塩濃度下では単鎖型になった。ウイルスの単鎖DNAの分子量はアガロース電気泳動法により1.99×106ダルトンと推定された。以上の結果は本ウイルスがパルボウイルス科のデンソウイルスに属することを示しているが, 既知のカイコの濃核病ウイルス (伊那株) とは血清学的に反応せず, また構造蛋白とDNAの分子量が著しく異なることから, カイコの新しい濃核病ウイルスであるといえる。

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