日本蚕糸学雑誌
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カイコの翅原基における蛹化後のDNA合成と細胞分裂
川崎 秀樹岩下 嘉光
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1984 年 53 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

蛹化初期におけるカイコの翅原基のDNA合成および細胞分裂の時期とりん毛形成との関係を明らかにするため, 組織学的観察およびオートラジオグラフィーによる研究を行い, マイトマイシンCによるDNA合成阻害の影響についても観察した。翅原基の細胞分裂は蛹化後28時間目に最高となり, りん片幹細胞Iでは28~44時間目まで同程度の分裂数が数えられ, りん片幹細胞IIの分裂は32~44時間目に認められた。りん毛形成は60時間目以降に開始された。3H-チミジンの取込みは前蛹期に低く, 蛹化当日と蛹化後1日目に約10%の細胞で, 3日目には特異的に生毛細胞に認められた。蛹化後0~24時間にマイトマイシンCの投与によりりん毛形成が著しく阻害されることが判明した。以上の結果, りん片幹細胞Iは蛹化後形成され, 次いで細胞分裂, りん毛形成, 生毛細胞核の染色質の倍化などが進行するものと推定した。

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