日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
水耕による濃度試験からみた桑のカリ栄養の指標
川内 郁緒高岸 秀次郎
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 54 巻 4 号 p. 290-296

詳細
抄録

培養液中カリ濃度を0~20mMの範囲で7段階に変えた水耕試験結果から桑のカリ栄養状態を示す指標を検討した。カリ濃度が1/20mM以下で典型的なカリ欠乏症が発現したが, 欠乏症状は弱光下で黒褐色点, 強光下で葉脈間ネクロシスを呈し, 日射の強さにより異なった。1/5mMでも下位葉が黄化したが, より高濃度の場合は外見上異常は認められなかった。カリ濃度の増大にともなって各器官のカリ含有率が増大した。カリの変動と共に桑葉中の他の無機組成も変動し, とくにカリとの拮抗作用によりカルシウム, マグネシウムの含量が低下した。またリン酸も低下した。吸収されたカリの樹体各器官への分配には葉柄および根が調節器官として機能していると考えられた。葉身または葉柄の平均カリ含有率と収穫量 (乾燥全葉量) との関係から葉身で0.3~0.4%, 葉柄で0.3%以下は欠乏, ともに0.6%程度までは欠乏ないし正常, それ以上葉身で2.5%, 葉柄で5.7%まではぜいたく吸収, さらに高含量の場合は過剰状態にあるものと推定された。また中上位附近の桑葉を供試し, 葉身, 葉柄におけるカリ含有率の比較から, 葉身>葉柄の場合を欠乏, 逆の場合をぜいたく吸収あるいは過剰, 葉身≒葉柄を正常とする栄養診断の新たな方法を導き, 均衡した場合の含有率を0.6%と推定した。

著者関連情報
© 社団法人日本蚕糸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top