日本蚕糸学雑誌
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カイコ幼虫に投与した殺虫剤の産下卵への移行
山野井 文夫
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1987 年 56 巻 6 号 p. 463-466

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抄録

カイコ5齢幼虫に低濃度の有機リン殺虫剤MPPならびにEPN (MPP: 250ppm, EPN: 90ppm) を経口投与し, その成虫の産下卵をガスクロマトグラフィーによって分析したところ, 投与薬剤そのものがMPP投与区からは生物重当たり11.0ppm, EPN投与区からは同16.6ppmが検出された。この検出量は産下卵1粒当たりMPP投与区では6.1ng, EPN投与区では9.3ngの薬剤残留量に相当した。このことから, 幼虫期に薬剤投与を受けたカイコ成虫の産下卵が孵化不良となるのは薬剤が蛹・成虫を経て卵へ移行し, 残留していたことによるものであることが実証された。以上の結果に基づき, 有機リン殺虫剤による孵化阻害作用について考察した。

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