日本蚕糸学雑誌
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家蚕幼虫に寄生したクワコヤドリバエ幼虫の成長発育
黄色 俊一仲沢 功貴
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1987 年 56 巻 6 号 p. 494-499

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抄録

クワコヤドリバエは, 家蚕への寄生時期が3齢期から5齢期までのいずれの時期であっても, 常に寄主家蚕の前蛹期に老熟幼虫となって蚕体から脱出する。この寄生者の急激な成長発育は, 寄主の最後の幼虫脱皮の3日後, 吐糸開始に先立って始まった。すなわち, 寄生者の1齢期間はまちまちであったが, 寄生者の脱皮は常に寄主の変態に関して同じ時期におこった。4齢期にクワコヤドリバエが寄生した家蚕を終齢1日目に胸腹間結紮すると, 寄生者は, 成長発育を促進するエクジステロンを投与しなくても, 遊離腹部内で脱皮して2齢になった。一方, 遊離腹部内での寄生者の成長発育は, メトプレンを投与することによって完全に阻止された。これらの結果は, クワコヤドリバエ幼虫の成長発育が, 家蚕の変態に同調していること, 寄生者の内分泌機構が, 寄主の若齢中は高濃度のJH環境によって抑制されていることを示唆している。

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