日本蚕糸学雑誌
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塩縮・分繊・樹脂加工処理による絹糸の構造変化
ニット用絹撚系の開発研究 第IV報
加藤 弘
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1991 年 60 巻 1 号 p. 34-47

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抄録

塩縮・分繊・樹脂加工絹糸 (以下, SDRシルクと呼称する。) の構造変化を検討するためにX線回折, IR, TG, DSC, SEM写真撮影の測定を行った。
SDRシルクのX線回折図形は, 収縮率が大きくなるとともに次第に干渉点が全体的に弱くなり, 結晶構造が非常に変化して, 非結晶領域が増加することが確かめられた。しかしながら, 糸表面樹脂化処理したSDRシルクのX線回折像にはほとんど変化が観察されなかった。KBr透過法および反射 (KRS-5) 法によって測定したIRスペクトルには, SDRシルクとコントロール試料の間に相違が観察されなく, 塩縮・分縮・樹脂化処理しても, 絹フィブロイン中のC=O結合とN-H結合に基づく分子形態 (立体構造) に対して影響を及ぼさないことが分かった。TG測定において, 30~125℃の温度範囲の7~8%の重量減少と210℃以上の温度から始まる数十%の重量減少が見られたとともに, SDRシルクにはその2つの重量減少の間に数%の重量減少を示す分解が認められた。SDRシルクの熱分解開始温度は, コントロール試料よりも10℃近く高温側の304~306℃に移行したことを認めた。DSC測定では吸熱ピーク温度 (Tm) とピーク面積より算出した熱量 (ΔHm) がいずれもコントロール試料と比較して, 同等が若干大きな値が得られた。SEM写真より収縮率の増加に伴い, 直線状の形態からクリンプが多数形成された曲線状の形態へと変化している様子が観察された。

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