1991 年 60 巻 1 号 p. 55-61
スクロース・グルコース・マルトースもしくは等量のグルコースとフラクトースを糖質として含み, 食下量指標として酸化クロムを含有する準合成飼料をカイコに与え, その管腔内容物の糖質組成より中腸における糖の吸収様式を調査した。
1. 2糖類の場合もグルコースと同様, 中腸最前部から高い能率で吸収された。スクロース飼料育蚕において, 中腸前~中部の管腔内容物中に還元糖が出現し, スクロースが中腸管腔部で分解を受けることが示された。同様のことはマルトース飼料育蚕でも確認された。
2. スクロース飼料育蚕管腔の還元糖中, グルコース量は常にフラクトース量を下回った。またそれは, グルコースとフラクトースの混合飼料を与えた実験区でも確かめられた。
3. いずれの糖質の実験区においても結腸内容への糖の再出現が確認された。
4. 以上の結果より囲食膜の酵素の寄与も含めた少糖の分解と吸収の機構の考察を行った。