日本蚕糸学雑誌
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高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いたカイコ体内ビタミンB6の存在形態の解析
黄 龍全張 剣韻早川 享志柘植 治人
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1997 年 66 巻 3 号 p. 169-175

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抄録

高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いてカイコ体内ビタミンB6の存在形態について, 分析・検討した。桑葉と人工飼料で飼育したカイコ体内では, PNが補酵素型誘導体であるPLP, PMPよりもはるかに多量に存在しており, 5齢起蚕から成虫羽化までの間の主な組織, 器官中の含有量の変化も顕著であった。桑葉と人工飼料中のPNは容易にカイコの消化管に吸収されて体液に入り, 5齢前半では主に脂肪体とマルピギー管に集まり貯蔵され, 5齢後半ではPNの大部分が絹糸腺に集積したと考えられる。絹糸腺は, 過剰なPNの排泄経路の一つであるかも知れない。吐糸を終えたカイコの体内では, PNがほとんど脂肪体に集まり, 雌蛹の場合, 蛹期には脂肪体中のPNは再び体液に入り, 卵形成にともなって最終的にその大部分は卵に取り込まれたと考えられる。産下卵のPN含有量は1,920nmol/gと非常に高かった。一方, PLPとPMPについては, 絹糸腺と脂肪体でのタンパク質の生合成が盛んになる時期に含有量が増加した。

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