日本蚕糸学雑誌
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養蚕経営規模の動向と規模の経済および収益性との相互関係
能美 誠松村 一善佐藤 俊夫
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2001 年 70 巻 3 号 p. 145-154

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抄録

(1) 養蚕は, 高度経済成長期から現在に至るまで, 水稲, 酪農, 肥育豚と比較して規模の経済がよく作用する作目であった。ただし, 水稲, 酪農, 肥育豚とも, 規模の経済性が強まってきており, 現在では, 養蚕, 水稲, 酪農の規模の経済性はほぼ同水準となっている。
(2) 養蚕経営において規模の経済の発現要因として重視すべきものの一つは, 多回育の容易性から生じる建物の利用度向上である。また, 労働生産性の向上も規模の経済を発揮させる重要な要因である。
(3) 近年において養蚕経営の平均規模を縮小させてきた最も重要な要因は, 相対収益性の低さであった。いくら養蚕経営に規模の経済性が認められても, 近年における非常に低い収益性が, 規模拡大とともに労働の機会費用を増大させるため, 経営規模縮小が有利な経済的行動となり, それが近年における平均経営規模縮小という現象を生じさせた。これは, 規模の経済はあまり強く作用していないが, 有利な価格を背景として規模拡大を続けてきた肥育豚とは対照的な動きである。

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