2009 年 66 巻 4 号 p. 130-135
再生セルロース膜を硫酸化することにより硫酸セルロース(CS)電解質膜を作製し,プロトン伝導度,含水率およびメタノール水溶液に対する含溶媒率とメタノール透過係数(PM)を調べた.CS 膜はプロトン伝導性を示し,硫酸基の導入量の大きい CS 膜ほどプロトン伝導度が高かった.含溶媒率と PM はメタノール濃度によらずほぼ一定であり,含溶媒率の高い CS 膜ほど PM が高い傾向を示した.CS 膜に架橋を導入することがプロトン伝導度の向上とメタノール透過の抑制に効果的であった.プロトン伝導度の増加は架橋により含水率が減少し膜中の硫酸基の濃度が増加したため,メタノール透過の減少は架橋により含溶媒率が減少したためであると考えられた.この架橋膜は室温にて Nafion 112®に匹敵する 0.081 S cm-1 のプロトン伝導度を示し,3M メタノール水溶液に対しては Nafion 112®と比較して 1/2 以下のメタノール透過性を示した.