高分子論文集
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66 巻, 4 号
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一般論文
  • 久保山 敬一, 井久田 明史, 中嶋 隆人, 扇澤 敏明
    2009 年 66 巻 4 号 p. 119-129
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル フリー
    近年,光学ポリマーが光学ディスクドライブのピックアップレンズやカラー液晶ディスプレイ用の位相差フィルムなど,より高性能な光学デバイスへ利用されるようになり,より高性能な材料が必要とされている.高性能化のためには屈折率・複屈折の値そのものの制御のほか,波長分散の制御が重要である.しかしながら,これらの特性,とくに複屈折分散と分子構造との関係に関する基礎的な知見は十分であるとは言い難い.そこで本研究では新規材料を開発する際にも有用であると考えられる,量子化学計算を用いた手法により屈折率・複屈折の波長分散を計算し,分子の化学構造との関係について検討した.より単純なモデル分子としてベンゼン,シクロヘキサン,n-ヘキサンを用いて複屈折分散について検討した結果,屈折率異方性と複屈折の分散の大きさとの間には関連があり,屈折率の異方性が大きいものでは複屈折の分散が大きくなることを見出した.したがって,屈折率異方性の小さいシクロヘキサンでは複屈折の波長分散は小さく,これとのアナロジーからシクロオレフィン系ポリマーの低複屈折性およびその低分散性を説明できることを示した.
  • 葛西 裕, 赤平 亮, 阿布 里提, 浦山 健治, 瀧川 敏算
    2009 年 66 巻 4 号 p. 130-135
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル フリー
    再生セルロース膜を硫酸化することにより硫酸セルロース(CS)電解質膜を作製し,プロトン伝導度,含水率およびメタノール水溶液に対する含溶媒率とメタノール透過係数(PM)を調べた.CS 膜はプロトン伝導性を示し,硫酸基の導入量の大きい CS 膜ほどプロトン伝導度が高かった.含溶媒率と PM はメタノール濃度によらずほぼ一定であり,含溶媒率の高い CS 膜ほど PM が高い傾向を示した.CS 膜に架橋を導入することがプロトン伝導度の向上とメタノール透過の抑制に効果的であった.プロトン伝導度の増加は架橋により含水率が減少し膜中の硫酸基の濃度が増加したため,メタノール透過の減少は架橋により含溶媒率が減少したためであると考えられた.この架橋膜は室温にて Nafion 112®に匹敵する 0.081 S cm-1 のプロトン伝導度を示し,3M メタノール水溶液に対しては Nafion 112®と比較して 1/2 以下のメタノール透過性を示した.
  • 安孫子 宗平, 田中 正剛, 木下 隆利
    2009 年 66 巻 4 号 p. 136-140
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル フリー
    二次元場における超分子構造体の構築を目的として,両親媒性ブロックコポリマー ,(LELL)4-PEG, が空気/水界面において形成する分子膜構造を,ポリペプチド部の二次構造形成の観点より検討した.(LELL)4-PEG はポリペプチド部にグルタミン酸残基を含むため,得られる分子膜は水相の pH に応答し,その膜構造が変化した.分子膜の二次構造解析から,pH 3 の場合は β-シート構造の形成が,一方 pH 10 の場合は α-ヘリックス構造の形成が確認された.とくに pH 3 で調製した分子膜はポリペプチド部の分子間水素結合により繊維状会合体を形成し,この分子膜構造は表面圧に強く依存し,膜が固体状態となる条件において著しい変化を示した.この結果は,PEG 部が水相に沈み込むことによりブラシ状構造体が形成されることで,繊維状会合体どうしの間隔が狭まり,同時にポリペプチド部の分子間水素結合が促進されることによるものと考えられる.
  • 菱田 政清, 敷中 一洋, 稲沢 泰規, 片山 義博, 梶田 真也, 政井 英司, 中村 雅哉, 大塚 祐一郎, 大原 誠資, 重原 淳孝
    2009 年 66 巻 4 号 p. 141-146
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル フリー
    リグニン生分解最終中間物である 2-ピロン-4,6-ジカルボン酸を繰返し単位中に有するポリエステルが,金属やグラッシーカーボンに対して約 30~60 MPa の強力な接着力を示すこと1)を利用して,アセチレンブラック,グラファイト粉末,ミクロファイバー状グラファイト,銅粉末,銀ナノ粒子を混合した導電性コンポジット接着剤を作製した.いずれもフィラー含量の増加に伴ってコンポジットの導電性は向上したが,金属片への接着力は低下した.しかし銀ナノ粒子コンポジットでは,フィラー含量 55 wt%の条件下においても電気伝導度は 10-2 S cm-1 で,なおかつ鉄などに対する接着力は,低下してもなお約 30 MPa を維持し,電気伝導度と接着力のいずれもが導電性コンポジット接着剤として実用可能な値となった.
  • 岡本 昭子, 敷地 渉, 前山 勝也, 尾池 秀章, 今泉 雅裕, 米澤 宣行
    2009 年 66 巻 4 号 p. 147-153
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル フリー
    親電子芳香族置換アシル化重縮合反応による芳香族ポリケトン合成における,2,2′-ジメトキシビス(1-ナフチル)(2)のアシル受容体モノマーとしての重合反応挙動および 2,2′-ジメトキシビス(1-ナフチリレン)-6,6′-ジカルボン酸(15)およびその酸クロリド(16)のアシル供与体モノマーとしての重合反応挙動について,これらのモノマー分子の同族体構造を有する芳香族環集合である 2,2′-ジメトキシビフェニル(1)とそのジカルボン酸誘導体(11)および酸クロリド誘導体(12)の反応挙動と比較することを通して,系統的に整理した.ビナフチル 2 のアシル受容モノマーとしての重合能はビフェニル 1 に比べて高くなく,大きな重合度のポリケトンは得られなかった.一方,ビナフチルジカルボン酸 15 およびその酸クロリド(16)はビフェニル 1 との重縮合で中程度の重合度のポリマーを与えた.親電子芳香族置換アシル化重縮合反応による芳香族ポリケトン合成では,一般にアシル受容体モノマーの反応性が重合全体の進み易さを支配すること,トリフルオロメタンスルホン酸は広い範囲のモノマーに適用できる酸性媒介体であること,五酸化二リン-メタンスルホン酸混合物はモノマーの組合せの影響を大きく受けた重合挙動を示すことが明らかとなった.
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