多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂を用いて低熱膨張率を示す耐熱性樹脂硬化物を得た.スタッキング効果を有するナフタレンやジヒドロアントラセンを主骨格とするエポキシ樹脂を芳香族ジアミンである 4,4′-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)で硬化させることにより得られる硬化物の熱膨張率(CTE)は 49.8 ppm/K,ガラス転移温度(Tg)は 236℃ を示した.これらの値は,比較のために検討した DDS 硬化のビスフェノール A 型エポキシ樹脂(DGEBA)と比較して CTE で 15.3 ppm/K 低く,Tg で 19℃ 高かった.また,従来から多用されているクレゾールノボラックを硬化剤とした DGEBA 硬化物との比較では,CTE が 22.0 ppm/K 低く,Tg が 77℃ 高い値であった.樹脂硬化物の CTE と密度の間には明らかな相関が認められ,多環芳香環による π-π スタッキング効果が低熱膨張率化に寄与していることが示唆された.また,DDS 硬化の硬化促進剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体が有効であることが確認された.