2011 年 68 巻 8 号 p. 521-531
近年,高速混合,精密温度制御,精密滞留時間制御,界面での効率的物質・エネルギー移動といったフローマイクロリアクターシステムの特長を活かした重合反応の開発への関心が急速に高まっている.重合反応の制御性を飛躍的に向上させることができるためである.本報では,そのような研究例を反応タイプ別に紹介する.ビニルエーテル類のカチオン重合では,カチオン生長末端の安定化を利用しない高速リビングカチオン重合が可能となる.また,スチレン類やメタクリル酸エステルのアニオン重合では,真空ラインなどを用いることなくバッチ型反応器よりも高い温度で重合を行うことが可能となる.さらに,フローマイクロリアクターシステムを用いて,重合反応を集積化することにより,さまざまなタイプのブロックコポリマーの効率的な合成も可能となる.今後,フローマイクロリアクターシステムが,環境調和型の新規高分子合成・製造において重要な役割を担うと期待される.