2013 年 70 巻 4 号 p. 140-144
遺伝子治療に必要なDNAの輸送媒体(ベクター)として,親水部に糖アルコールを有する芳香族カチオン性脂質を新規に合成した.ベクターには内包したDNAを標的部位でリリースさせる機能性が必要であると考えられる.pH変化を外部刺激としてミセル構造が変化するようなpH応答部位をカチオン性脂質に導入し,外部刺激に伴うミセル構造の変化を小角X線散乱(SAXS)および透過型電子顕微鏡(TEM)によるミセルの形態観察を行い検証した.pHの変化に伴い,脂質が形成するミセルは棒状ミセル,ベシクル,ラメラ構造へと変化した.pH応答部位として導入したアミノ基のプロトン化・脱プロトン化が起こることで,脂質のヘッド間の静電反発に違いが生じるため,形成されるミセル構造がpHによって変化することが示された.