高分子論文集
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原著論文
フェニルグリシン化合物による鉄アレーン錯体/増感色素光開始剤系でのメタクリラート化合物の光重合率向上
山下 克浩今橋 聰
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2016 年 73 巻 2 号 p. 207-212

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抄録

鉄アレーン錯体と増感色素からなる光開始剤系によるメタクリラート化合物の光重合挙動について調べた.この光開始剤系では,光重合反応が完全には進行しないことがIR測定により判明し,光反応によりシクロペンタジエニルラジカル(CPR)が生成することがESR測定により示された.露光に伴うポリメタクリラート成長ラジカル(PPR)量の増加は,過酸化物と増感色素からなる開始剤系と比較しかなり少なかった.フェニルグリシン化合物(PC)の添加により,CPRの量は減少し,PPRの量が増加した.これらの現象は,CPRが重合禁止剤として働くことと,PCがCPRを還元することで説明できる.また,酸化されたPCからも,重合を開始するアニリノメチルラジカルが生成すると考えられる.この光開始剤系を使用する感光性樹脂において,PCの添加は光重合反応率を高める効果的な方法である.

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© 2016 公益社団法人 高分子学会
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