抄録
ドラッグデリバリーシステム(DDS)は,長時間にわたって薬剤を治療有効濃度に保つことや,副作用を低減させる技術であり,体内での薬の徐放,病態組織への局所的輸送を制御するシステムである.筆者らは,外部からの温度刺激に鋭敏に応答して相転移するpoly(N-isopropylacrylamide)を基本骨格とした刺激応答性高分子をナノキャリアに応用することで細胞導入や薬の放出制御を達成してきた.本報では,温度およびpHに応答して相転移を示し,細胞導入を制御できる高分子の設計,それらをミセル,リポソームに導入することで,抗がん剤やsiRNAのDDS応用に関し,筆者らの最近の研究成果を中心に紹介する.