高分子論文集
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総合論文
ラマン分光法を用いた結晶性ポリオレフィン材料の微視的変形挙動の解析
木田 拓充比江嶋 祐介新田 晃平
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2018 年 75 巻 6 号 p. 497-506

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抄録

高密度ポリエチレンを一軸延伸した場合,弾性領域では非晶中分子鎖に応力が集中しており,結晶中分子鎖の配向はほぼ進行しない.降伏領域では,球晶が崩壊し分子鎖の配向が開始することで分子鎖軸方向には引張力が作用する.室温付近で延伸した場合には結晶中の分子鎖間距離が収縮しており,くびれの開始に伴う巨視的なポアソン収縮を反映していると考えられる.また,結晶分子鎖は降伏領域において即座に延伸方向へ配向せず,延伸方向に対して30–50°方向へと配向した.これは,ラメラクラスターユニットの排除体積効果によって延伸方向への配向が阻害されたことを反映している.一方,α1緩和温度以上で延伸した場合は,降伏領域において分子鎖に引張のみが作用し,第一降伏点を過ぎると結晶中分子鎖は延伸方向へと高度に配向した.これは,α1緩和温度以上での結晶相の流動性の向上が原因であると考えられる.

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© 2018 公益社団法人 高分子学会
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