高分子論文集
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75 巻, 6 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
特集論文=ポリオレフィン
素描
総合論文
  • 原内 洋輔, 寳川 卓士, 足達 慧, 荒井 邦仁, 澤口 太一, 早野 重孝, 内山 進
    2018 年 75 巻 6 号 p. 477-485
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー
    シクロオレフィンポリマー(cyclo-olefin polymer;COP)は,脂環構造をもつ飽和の炭化水素ポリマーである.COPは高透明,高純度,低吸湿,低吸着などの特徴を生かし,光学部品,表示パネル部材,医薬品およびバイオ用途,半導体容器などさまざまな分野に利用されてきた.本報では,市場の高機能化の要求を満たすべく行ってきた最新の開発事例について紹介する.光学用途では,樹脂の溶融粘度カーブに着目し,薄肉レンズの射出成形を行った時にウェルドラインの発生が少ない新しいCOPを開発した.医薬品包装用途では,ガラスを用いた場合に比べてタンパク質の吸着や凝集体の発生が抑制されることを確認した.また,ポリマー中の立体規則性を制御することで,高い耐熱性をもつ結晶性COPの開発に成功した.
  • 寺尾 浩志, 中野 隆志, 石井 聖一, 藤田 照典
    2018 年 75 巻 6 号 p. 486-496
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/09/19
    ジャーナル フリー
    オレフィン重合における触媒活性種分子内の引力的相互作用と,この相互作用が重合反応に及ぼす影響について概説する.従来,オレフィン重合触媒の設計は触媒とオレフィンやポリマー鎖の立体的な反発を利用して,分子量や立体規則性といったポリマーの一次構造を制御する方法が,一般的であった.近年,オレフィン重合において困難とされていたリビング重合を進行させるポストメタロセン触媒がいくつか報告されている.これらのうち,配位子にF原子をもつ触媒は,このF原子とポリマー鎖との間に,C-F⋯H-C引力的相互作用が存在し,この相互作用によりリビング重合が達成されると考えられている.このような,非共有結合性の引力的な相互作用によるオレフィン重合反応の制御は,従来の立体反発による制御とは異なるアプローチである.本報では,前周期および後周期遷移金属のポストメタロセン触媒における,配位子中のF原子が誘起する非共有結合の引力相互作用およびこれらの相互作用が重合反応に与える影響について議論する.
  • 木田 拓充, 比江嶋 祐介, 新田 晃平
    2018 年 75 巻 6 号 p. 497-506
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/10/09
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレンを一軸延伸した場合,弾性領域では非晶中分子鎖に応力が集中しており,結晶中分子鎖の配向はほぼ進行しない.降伏領域では,球晶が崩壊し分子鎖の配向が開始することで分子鎖軸方向には引張力が作用する.室温付近で延伸した場合には結晶中の分子鎖間距離が収縮しており,くびれの開始に伴う巨視的なポアソン収縮を反映していると考えられる.また,結晶分子鎖は降伏領域において即座に延伸方向へ配向せず,延伸方向に対して30–50°方向へと配向した.これは,ラメラクラスターユニットの排除体積効果によって延伸方向への配向が阻害されたことを反映している.一方,α1緩和温度以上で延伸した場合は,降伏領域において分子鎖に引張のみが作用し,第一降伏点を過ぎると結晶中分子鎖は延伸方向へと高度に配向した.これは,α1緩和温度以上での結晶相の流動性の向上が原因であると考えられる.
    Editor's pick

  • 竹内 大介, 高野 重永, 千葉 友莉子, 岩澤 孝, 小坂田 耕太郎
    2018 年 75 巻 6 号 p. 507-514
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/10/04
    ジャーナル フリー
    オレフィン重合反応において,二核金属錯体触媒は,しばしば単核金属錯体触媒とは異なる触媒特性を示すことが知られている.従来報告されている二核金属錯体触媒の多くは,単核錯体の配位子を柔軟なスペーサーで連結した構造を有していた.本研究では,金属間における共同効果の効率よい発現を期待し,二つの金属中心が近接した位置に固定された二層型環状二核錯体の設計を行った.それらがエチレンやα-オレフィンの重合において,単核錯体に比べて高い活性を示すことや,より高分子量のポリマーを与えること,高温においても触媒としての安定性が高いことを見いだした.さらに,種々のコモノマーとの共重合における,コモノマーの導入量や導入される位置,構造が大きく変化するなど,二層型環状二核錯体が単核錯体とは異なるユニークな重合触媒能を示すことを明らかにした.
    Editor's pick

  • Bruce S. XIN, 佐藤 直正, 丹那 晃央, 大石 泰生, 小西 洋平, 清水 史彦
    2018 年 75 巻 6 号 p. 515-526
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/10/03
    ジャーナル フリー
    筆者らは,エチレンと極性モノマーの共重合について研究を行ってきた.G. C. Bazanらとの共同研究から,α-iminocarboxamideをリガンドとする中性のNi錯体が,共触媒を必要としないsingle-site触媒として,エチレンとアクリル酸エステルの共重合を進行させることを見いだした.ただし,この触媒系は耐熱性が低く,40°C程度の低温重合が必要であったことから,さらに別の触媒系について探索を行った.その結果,ホスフィノフェノールをリガンドとする中性Ni錯体が,エチレンとアクリル酸エステルの共重合をより高温で触媒し,高度に直鎖状の共重合体を生成することを見いだした.そして,このリガンドにメトキシ基による効果を組み込むことにより,共重合活性,分子量,アクリル酸エステル含量の点で,性能を大きく向上させることに成功した.
  • 鞆津 典夫, 蔵本 正彦, 石原 伸英
    2018 年 75 巻 6 号 p. 527-542
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/10/24
    ジャーナル フリー
    五大汎用樹脂の一つである一般的なポリスチレンは立体規則性がない,アタクチックポリスチレンである.また,スチレンの立体規則重合の研究は古く,G. Natta教授をはじめ数多くの研究者によって行われてきた.その結果,Ziegler-Natta触媒などによりアイソタクチックポリスチレン(IPS)が得られることは良く知られている.一方,高度に制御されたシンジオタクチックポリスチレン(SPS)の合成例はなかったが,筆者らは独自の均一系触媒により,世界で初めて立体規則性がほぼ100%のSPSの合成に成功した.SPSはベンゼン環が主鎖に対して規則正しく交互に配置した構造の結晶性高分子であり,その融点はIPSより40°Cも高く,270°Cである.これは,スチレンモノマーのみを用いて,ポリマー構造を精密に制御することにより耐熱性エンジニアリングプラスチックを製造する画期的な技術である.さらにSPSはIPSと異なり結晶化速度が速く,1997年に出光興産(株)により工業化された.本報ではSPS重合用触媒,重合機構,SPSの構造,物性について紹介する.
  • 野村 琴広, 林原 瞳
    2018 年 75 巻 6 号 p. 543-550
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/08/21
    ジャーナル フリー
    環状オレフィンの開環メタセシス重合(Ring-Opening Metathesis Polymerization,ROMP)に高い触媒活性を示すイミド配位子およびフェノキシ配位子を有するバナジウム錯体を設計・創製した.ノルボルネン(NBE)のROMPにおける触媒活性は,配位子上の置換基の影響を強く受け,V(CHSiMe3)(N-2,6-Cl2C6H3)(OC6F5)(PMe3)2が最も高活性を示した.この錯体ではcis-シクロオクテン(COE)の重合も進行し,高温ほど高活性を示した.さらにV(CHSiMe3)(N-2,6-Cl2C6H3)[OC(CF3)3](PMe3)2によるNBEのROMPでは,得られるポリマーのオレフィン二重結合がほとんどcisで,PMe3の添加により高温で高活性・高選択性を示した.この種の重合を末端オレフィン存在下で実施すると,速やかに連鎖移動反応が進行した.
原著論文
  • 田中 亮, 山下 高幸, 渡子 直紀, 中山 祐正, 塩野 毅
    2018 年 75 巻 6 号 p. 551-556
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/07/30
    ジャーナル フリー
    メチルアルミノキサン類に特定のフェノール類を加えると,オレフィン重合における助触媒能が大幅に向上することはよく知られている.一方,アルミノキサン類には重合を阻害しうるトリアルキルアルミニウムが含まれているため,活性向上の主要因がアルキルアルミニウムの変性とアルミノキサン骨格自体の変性のどちらにあるかを詳しく検証した例はなかった.今回筆者らは,トリアルキルアルミニウムの含有量をできるだけ低減した乾燥修飾メチルアルミノキサン(dMMAO)をさまざまなフェノール・シラノールで変性させた助触媒を調製し,リビング重合触媒であるフルオレニルアミドチタン錯体と組合せてプロピレン重合に応用した.その結果,酸性度の高いヒドロキシ基でアルミノキサンを修飾すると助触媒能が向上することを明らかにした.また,シラノール修飾MMAOはシリカ担持MMAOと同様の挙動を示すこともわかった.
  • 工藤 蒼右, 平原 実留, 荻原 仁志, 黒川 秀樹
    2018 年 75 巻 6 号 p. 557-563
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/10/02
    ジャーナル フリー
    成型加工性の良好なポリエチレン(PE)を効率よく合成するために,粘土鉱物層間にニッケルあるいは鉄錯体を固定化した二種類の不均一系触媒を用いて単一反応器内でのエチレン重合およびエチレン/1-ヘキセン共重合を行い,PEブレンド体(PEB)を合成した.エチレン重合で合成したPEBは,DSC測定より,ニッケル系触媒から生成した直鎖状低密度PEと鉄系触媒から生成した高密度PEの混合物であった.またPEBのGPCプロファイルは,それぞれの触媒を単独で用いて合成したPEのそれらを活性比で足し合わせて作成したプロファイルと非常に良く一致した.エチレン/1-ヘキセン共重合では,PEBのDSCにおける低融点側ピークの低温へのシフトが観測されたことから,ニッケル触媒による共重合の進行が確認された.一連の結果より,本触媒系を用いた単一反応器内のエチレン重合によって,分子量,分子量分布および密度の制御が可能であった.
ノート
一般投稿論文
総説
  • 長尾 祐樹
    2018 年 75 巻 6 号 p. 576-587
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー
    高プロトン伝導性高分子には,エネルギー変換,センサー,触媒,アクチュエータなどさまざまな用途がある.含水により高プロトン伝導性を示す高分子の分子設計は,強酸性基を骨格に導入し,含水により親疎水の相分離構造を形成させ,親水チャネルを使ってプロトンを輸送させることに基づいている.Nafionのような高プロトン伝導性高分子は,相分離構造を示すものの,長距離秩序をもたないために,構造とプロトン伝導性の相関の議論は容易ではなかった.筆者らの研究グループは基板界面を利用して高分子を配向させ,分子配向がプロトン伝導性に与える影響を調べてきた.本報では,Nafionの薄膜化によるプロトン伝導度の低下,アミドオリゴマー薄膜のプロトン伝導度の基板依存性,ポリペプチド薄膜の分子配向によるプロトン伝導度の向上,およびスルホン化ポリイミド薄膜が有するリオトロピック液晶性による組織構造と高プロトン伝導性の相関を述べる.
原著論文
  • 岡田 きよみ, Wang LONG, 大嶋 正裕
    2018 年 75 巻 6 号 p. 588-596
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー
    近年開発が進められているセルロースナノファイバー(CNF)は,多くの分野で注目されている材料であり,ポリプロピレン(PP)/CNFコンポジットとして実用化を目指して開発されつつある.しかし,実用化で必要とされるPP/CNFコンポジットの結晶構造や保存性に関する研究はほとんど報告されていない.そこで,筆者らは,PP/CNFコンポジットの100°C熱促進過程におけるPPの高次構造に関する変化,およびCNFの影響を分析し,以下の知見を得た.第一に,CNFは,β晶の形成,結晶および配向を抑制する.一方CNFは,分子配向下でのPPのβ晶成長を抑制するが,100°C下でのPPのβ晶成長を抑制しない.また,CNFは,結晶成長および結晶サイズの増大を抑制し,融解,結晶化におけるOn set値を上昇させる.そして,熱促進過程では,融解におけるOn set値変化を抑制し,結晶を微細なサイズ状態に保持する.第二に,PP/CNFは,熱酸化劣化後も形状が安定しており,熱促進安定性が高い.第三に,力学強度において,CNFは伸長を制限し,降伏応力を大きくする.本研究は,PP成形体の高次構造変化およびPP/CNF成形体におけるCNFの機能を明確にしている.
  • 西川 雄司, 伊藤 博人, 野田 勇夫, 長谷川 健
    2018 年 75 巻 6 号 p. 597-606
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/08/30
    ジャーナル フリー
    前報告でRing-downパルス圧縮ATR-ステップスキャン時間分解-FT-IRを開発した.今回,この新しい手法の基礎的な特性を把握するため,高密度ポリエチレンフィルムを試料に用いて,2917~2847 cm-1付近に観測されるCH2伸縮振動吸収帯域におけるRing-downパルス圧縮応答状態を観測した.得られたスペクトルは,Fresnelの多重反射モデルによるスペクトルシミュレーションを利用して検討し,新手法の背後にある物理現象の解明を行った.その結果,ATR法に固有な屈折率異常分散の影響によって応答強度比が変化するケースがあり注意を要することがわかった.また,プリズム自体の屈折率変動の影響が,おもに基音周波数にのみ影響を与えることがわかった.すなわち,倍音成分をおもに解析することで,測定に関係ない余計な影響を回避できることが判明した.また高周波数域で観測される倍音成分は,吸収のない粘弾性体や,ピエゾおよびおもりによる共振振動圧縮単独では生じないことがわかった.本手法では主としてRing-downパルス圧縮による観測分子の配向・再配向プロセスにおける双極子モーメントの非線形応答を観測していると考えられることから,新しい非線形分光法としての可能性が見いだされた.
  • 箭野 裕一, 西山 正一, 林 定快, 工藤 一希, 奥崎 秀典
    2018 年 75 巻 6 号 p. 607-612
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/08/07
    ジャーナル フリー
    3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の側鎖にアルキルスルホネート基を有するモノマーを新たに合成し,酸化重合することで新規自己ドープ型水溶性導電性高分子(S-PEDOT)を合成した.S-PEDOTは水に完全溶解し,重量平均分子量(Mw)と分子量分布はそれぞれ22,400 g/mol,15.4であった.また,S-PEDOTは結晶性を示し,結晶化度(Xc)は68.2%,結晶子サイズ(D100)は7.1 nmであった.S-PEDOT薄膜の膜厚(d=33∼158 nm)を変化させたときのシート抵抗(Rs=1670∼201 Ω/□)と全光線透過率(TT=94.2∼69.2%)の関係から,透明電極としての性能指数(FOM)は4.1であった.さらに,S-PEDOTの電気伝導度は315 S/cmに達することがわかった.
  • 原 秀太, 紅林 聖, 渡邊 柊人, 清水 繁, 伊掛 浩輝
    2018 年 75 巻 6 号 p. 613-618
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/10/04
    ジャーナル フリー
    ポリ-L-乳酸(PLLA)とポリ-D-乳酸(PDLA)の等量混合物を用い,キャスト溶媒としてヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)とクロロホルム(CHL)を用いて,半結晶性のキャストフィルムmix-PLA(HFIP)とmix-PLA(CHL)を作成し,それらの結晶形態を比較した.熱処理(アニーリング)をする前において,mix-PLA(CHL)では,PLLAとPDLAが対で作るステレオコンプレックス晶(sc晶)だけが形成されるのに対し,mix-PLA(HFIP)ではPLLAとPDLAが単独で作るα晶が主成分で,それと少量のsc晶が混在する形態が形成された.これらのフィルムを200°Cで熱処理すると,両者とも結晶は,sc晶へと変化したが,mix-PLA(HFIP)の結晶ドメインのサイズはmix-PLA(CHL)のものよりも大きくなった.
速報
  • 土屋 沙織, 古海 誓一
    2018 年 75 巻 6 号 p. 619-624
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/11/22
    [早期公開] 公開日: 2018/09/11
    ジャーナル フリー
    Colloidal crystals (CCs) have received tremendous interest because the highly ordered self-assembly of microparticles leads to the facile fabrication of 3D-photonic crystals. So far, there have been many reports on CC films fabricated with non-luminescent microparticles such as polystyrene (PS) or silica. This situation motivated us to synthesize luminescent PS microparticles by encapsulating organic dyes for the application to novel optoelectronic devices. In this communication, we report the successful preparation of luminescent PS microparticles encapsulating two kinds of organic dyes through emulsion polymerization in the presence of sodium dodecyl sulfate. When the luminescent PS microparticles were synthesized at an appropriate molar concentration of the organic dyes, the uniform CC films exhibited unique optical properties of not only Bragg reflection, but also with efficient white-light emission under illumination with UV light. As an extension of our findings, we could observe clear white-light emission from a flexible CC film of the luminescent PS particles self-assembled on a PET sheet.
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