高分子化學
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ポリアクリロニトリルの分別に関する研究
第1報分別沈殿の分別効果に及ぼす濃厚相中の重合体濃度の影響について
藤崎 誼達小林 秀彦
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1961 年 18 巻 193 号 p. 305-311

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抄録

二つの異なった溶媒-沈殿系について, 分別効果に及ぼす因子を論議した。重合体としてはポリアクリロニトリルを, 分別系としてはジメチルホルムアミドーヘプタン系および60%硝酸ブタノール系を実験の対象として取り上げた。ポリ塩化ビニルではシクロヘキサノンおよびテトラヒドロフランを溶媒とし, 沈殿剤として脂肪族アルコールを用いた分別系で得られた結果は微分分子量分布曲線が非常に鋭く, そして, 分布の幅が狭くなることが知られている。これと同じような現象がポリアクリロニトリルを硝酸-ブタノール系で分別したときに現われることを見出した。今まで, 分別効果に及ぼす因子として分別時の重合体初濃度および分別画分量については多く論ぜられているが, 濃厚相中の重合体濃度の影響についてはほとんど論ぜられていない。しかし, ポリアクリロニトリルの60%硝酸-ブタノール系分別沈殿で得られた異常な結果は濃厚相中の重合体濃度の分別時における変化と結びつけて満足に説明することができた.すなわち, ポリアクリロニトリルの分別沈殿において濃厚相中の重合体濃度はジメチルホルムアミドーヘプタン系分別では分別過程中の画分が低分子量の方に移るに従って徐々に増加するのに反し, 60%硝酸-ブタノール系ではある分子量以上の画分では濃厚相中の重合体濃度が異常に低くなることが見出された。この現象で, 得られた異常な分子量分布曲線の内容を合理的に説明することができる。なお, 得られた分布曲線に異状性が認められた60%硝酸-ブタノール系でもγ'=b/[η] +eの関係は満足され, かつてポリ塩化ビニルで認められた現象とは異なることを明らかにした。

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