高分子化學
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ポリアクリロニトリルの分別に関する研究
第2報 分別重合体初濃度ならびに分別画分量の分別効果に及ぼす影響について
藤崎 誼達小林 秀彦
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1961 年 18 巻 193 号 p. 312-319

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抄録

溶媒として硝酸を用い, 沈殿剤としてブタノールを使用した分別沈殿法によって得られたポリアクリロニトリルの分子量微分分布曲線は, 溶媒一沈殿剤系としてジメチルホルムアミドーヘプタンを用いた場合に比べて分布の幅が狭く, かつ鋭いことが知られている。この異常な現象は, 濃厚相中の重合体の容積分率, ことに高分子量領域におけるその変化を観察することによってよく説明できる。すなわち, ジメチルホルムアミドーヘプタン系によるポリアクリロニトリルの分別沈殿では, 濃厚相中の重合体の容積分率 (v2') は分別が進むに従って, 換言すれば分子量が小さくなるに従って上昇し, log M-logv2' は直線的関係で示される。しかし, 硝酸-ブタノール系では画分の分子量がある値以上でこの関係を満足せずv2'が異常に小さな値を示す。この現象が分別効果に直接的な原因を及ぼしていると思われる。この論文では上記二つの方法を用いたポリアクリロニトリルの分別結果に及ぼす分別重合体初濃度および分別画分量の影響について論ずる。結論的には, 分別初濃度の変化は分別結果に対して大きな影響を表わすが, 他方分別画分量の影響は非常に小さい。ポリアクリロニトリルの分別効果は濃厚相中の重合体の容積分率に大きく依存している。濃厚相中の容積分率は画分量の変動によっては影響されないが重合体分別初濃度はそれに大きく影響する。硝酸-ブタノール系におけるlog M-logv2' の関係の異常性は分別重合体初濃度を減少させることによって徐々に消失する。これが分別効果の向上に寄与している。

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